第06話 異世界ウォーズ 後編 - 24 - 巨大ダイヤ
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 24 - 巨大ダイヤ
ちなみにこのダイヤは俺の世界から持ち込んだものだ。この世界の軍資金が底を付きそうだとなったときに、チロに取りにいかせた。どのみち日本でこんなダイヤを換金するなど出来るものではない。元々こういう状況において利用するつもりだった。
魔王ゼグルスは大仰に言いながらも、無造作に手にした巨大ダイヤを俺に放り投げてくる。
元々俺のものだからと言っても、あまりに雑すぎないか、と思ったが表面上はうやうやしく受け取った風を装う。
さすがに無理があるかなと心配したが、横にいるモリタは目を丸くして巨大ダイヤに見入っていた。
「自分の目で本物だということを確かめてみるといい」
魔王ゼグルスが言う。
俺はその言葉を受けて、巨大ダイヤをモリタに渡した。
「おおっ!」
モリタは両手でやっと持てるような大きさのダイヤを受取り、妙な声を漏らす。
今のモリタの表情を見ていると、にわかに痴呆症になったかと勘違いしてしまいそうだ。
あらゆる角度からモリタはダイヤを眺め尽くすと、名残惜しそうに俺に返してきた。
俺はさすがに体裁があり、魔王ゼグルスと同じようには出来ないので、うやうやしい態度をよそおいながら両手で手渡す。
「少しは立場を考えてくれ」
俺が渡す瞬間小声で苦情を言うと。
「次は気をつける」
本気かどうかよくわからない返答が小声で返ってきた。
俺が元の位置に帰ると、魔王ゼグルスが再びモリタに話しかける。
「どうだ、その報酬は気に入ったか? 不服なら別の報酬を用意するが?」
それまで何処か異界を旅しているようになっていたモリタが、いきなり我に返った。
「めめめ、めっそうもございません! こ、これで十分というか、これがよろしいであります!」
所々裏返ったおかしな言葉でモリタが答える。誰の目からみても、欲に目が眩んでいますと全力で言っている感じであった。
「そうか。ならば十分な働きを見せるがよい。さすればこれはお主のものだ」
これ見よがしに、掌の上でぽんぽんと巨大ダイヤをはずませながら、魔王ゼグルスが言った。
「ははぁ、魔王陛下。このモリタ、かならずやご希望に添える結果を出してご覧に入れる所存でございます」
膝をつき、深々と頭を下げてモリタが宣言する。
もちろん頭を下げている相手が魔王ゼグルスではなくて、ゼグルスが持っている巨大ダイヤだということくらい誰の目にも明らかだ。
人間、このくらいわかりやすい方が付き合いやすい。