第06話 異世界ウォーズ 後編 - 20 - ゲートポート
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 20 - ゲートポート
日本で言えば、空港の搭乗ゲートを想像してもらうといいだろう。これは入出国管理にあたり、厳しさはまるで異なるがどんな国でもかならず行っていることだ。つまり俺とチロがやったことはすなわち密入国ということになる。
日本の法律では異世界間の人の出入りを取り締まる法律はないが、さすがにこの世界にはきちんとした法律が存在している。少し考えれば当たり前だが、野放図に外国人の受け入れなどできるわけがない。
犯罪者や不法労働者、それに違法薬物の持ち込み。それらすべてを水際で排除することが、国民の安全に繋がる。
というわけで、色々と手間取るかと思ったのだが、モリタは奥の手を使うことで税関をパスすることができるようにしてくれた。
要するに俺とチロを異世界マドゥフの外交官として扱うように職員を説得したのだ。マドゥフはまだ正式な国交のない国だが、さすがに無視するわけにもいかず特例ということで認めてくれた。
ちなみにマドゥフの存在は、ゲート施設の管理をするデータベースに登録されていた。おそらくヴェリック社の後ろにいるリヴォーク社の仕事だろう。本気でマドゥフにある資源を獲りに来ている証拠である。契約が締結され次第すぐに乗り込むつもりなのだ。
おかげで俺とチロはモリタを連れてマドゥフにすんなりと帰ることができた。
正規ゲートの出入り口は、魔王城のすぐ近くに設定されていて、ちょうど全貌を見ることが出来る場所であった。
「ここは魔界ですかな?」
ゲートから出たマドゥフが、最初に言った一言がそれである。
「ああその通りだが、なぜ分かった?」
俺はマドゥフが魔界だとは一言も言ってなかった。
「ええ、よく見かけるタイプの魔界ですからな。そもそも魔界案件は資源採掘絡みになることが多く、だいたいが金づる……もとい、いい取引先になります」
魔法技術が発達した世界において、良質な資源が豊富に埋蔵されている魔界との取引は普通に行われているのだろう。
当然それに関わっている法律家ならば、いくつもの魔界を訪れた経験があって当然だった。
逆に言えば、魔界をよく訪れる法律家というのは、資源絡みの仕事が多いと考えてもいいことになる。
その辺りはどうあれ、俺は深く聞くつもりはない。ただ、どうやらリベン弁護士事務所は当たりだったようだ。
「それでは付いてきてくれ、すぐにこの世界の支配者。魔王ゼグルスと面会する」