第06話 異世界ウォーズ 後編 - 13 - 都会へ
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 13 - 都会へ
何を言うのか若干引き気味ながらも、俺は話せるように手で合図を送ってやる。
「主様。主様のお体はもはやお一人だけのものではありません。くれぐれも無茶はせぬよう、ご自愛して行動なさってください。わたくしは……レヴンはずっとずっと主様のご無事を願ってお待ち申し上げております」
俺はそれを聞いて、思いっきり引いてしまった。
一日と立たずに帰ってくると約束したはずだ。なのに、レヴンのノリは今生の別れをする妻のようではないか。いつからレヴンが俺の女房になったんだ?
言いたいことは他にもいっぱいあったが、俺は一度深呼吸をしてそれらの言葉を一旦すべて飲み込んだ。
どれも出掛け間際にするような話ではなかったからだ。
結局俺は一言だけですます。
「すぐに戻る」
それだけ言いおいて、チロと共にゲートを潜った。
そこは、見る限り都会だった。
ファンタジー世界の要素などかけらもない。
空高くそびえる高層ビル郡。雑然とした街並み。行き交う人々の格好も、様々で雑多だが、みな都会風の格好をしている。
街のイメージとしては、東京というよりマンハッタン辺りだろうか。俺とチロはさしずめ何処かの田舎からでてきたお上りさんってところだろう。
想像はしていたが、簡単にはいきそうもない。もちろんなんの手がかりもないまま、漫然と歩き回ったところで問題は何も解決しないだろう。なにしろ、ここはあまりにも広く、そして人が多すぎた。
そんなことは最初から分かっていたことだ。兵器など送り込んでくるような世界が、高度に文明化されていることなど最初からわかりきっている以上、その中心部が巨大な都市部であることなど簡単に想像がつく。
逆に言えば、そんな世界で一番物をいうのが金であることもたやすく想像ができる。
俺はまず最初にチロを連れて、金塊をこの世界の通貨に変えられる店を探した。金はどの世界においても安定して換金できるので、異世界間で持ち歩くには最も都合がよい。
この世界での紙幣を手に入れた俺は、すぐに法律相談が可能な事務所を探す。
ヴェリック社とかリヴォーク社とかいうような名前は一切出さずに、事業を起こしたいので企業法務の相談をしたいとだけ伝えた。さすがに軍事企業の名前をいきなり告げられたら、どこの誰であれ警戒するだろうと思ったからだ。
俺とチロが訪れたのは、中規模の法律事務所であった。大手だと軍事企業と関わっている可能性が高くなるので意図的に避けたのだ。