第06話 異世界ウォーズ 後編 - 11 - 厄介者
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 11 - 厄介者
「な、なぜです? わたくしは従者なのですよ? 主たる貴方様の側にいて、どのようなご命令であれ従うことがわたくしの使命なのです! なのに、このわたくしが主様の下を離れて、捨て置かれるなどあってはならぬことです。そんなこと、許されていいはずがない!」
俺の支配下に入ろうが、所詮はレヴンはレヴンである。正論のみを押し通して、まるっきり融通というものが利かない。これで美少女でなければ、たとえ魔王ゼグルスの頼みであっても、有無を言わせず返品するところだ。
ただ、こういう相手に迂遠な手を使うと、後々面倒なことになることはわかりきっているので、はっきりと言ってやることにする。
「向こうの世界に乗り込んだら、高度に政治的な判断をする必要がでてくる。自覚はないかもしれんが、お前は歩く火薬庫だ。今の状況では危なすぎて到底連れて行くことはできん」
俺の言葉を聞いたレヴンは口をパクパクさせて何も言えなくなっていた。魔王ゼグルスの娘として、今までこんなことを正面から言われたことなどなかったのだろう。
「それで、寄生虫が話に割り込んで悪いんだけど。あたしは何をすればいいのかしら?」
寄生虫っていうところに、これでもかいうくらいアクセントを付けて言ったのは明らかに嫌味だ。相当根に持っている証拠である。
もちろん俺としては、そんなことはまったく気にならないのでスルーする。
「お前は帰り用のチケットだ。俺とチロが向こうに行った後、ゲートが閉じないように維持していてくれ」
ルーファに頼む役割というのは、実際それほど重要ではない。いざとなったら向こうの世界にある物を使えば帰ってくることはできる。何度も武器商人がやってきているのだ。テクノロジーとして確立しているのは間違いない。
だからと言って、向こうの状況が分からない状態で、保険も掛けずに乗り込むというのはリスクが高すぎる。
ルーファにはリスク回避の役割を負ってもらう。
「それでいいの?」
ゲートの維持にはよほど自信があるのか、ルーファの態度は至って普通だった。
「ああ。ただ、向こうの状況がわからんからな。帰ってくるまで、どのくらいかかるのかはわからん。それでも24時間以内には戻ってくるつもりだ。兵器を売り込みに来た連中は焦っている。一両日中にはなんらかの回答を持って、この世界にまたやってくるだろう。その時には俺も立ち会わないとならないからな」