第06話 異世界ウォーズ 後編 - 10 - 寄生虫論
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 10 - 寄生虫論
意外と素直にレヴンが謝ってくる。まぁ、そこで終わるような女ではないだろうなと思っていると。
「でも、これは主さまの御威光にかかわる問題です。たとえ寄生虫であろうと、ないがしろにしていれば下の者に対して示しがつきません。ここは逆に寄生虫であるからこそ、はっきりと分からせておく必要があります。寄生虫は寄生虫らしく、しっかりと躾けるべきなのです!」
案の定俺に詰め寄ってくる。魔王ゼグルスにとんでもない物を押し付けられたと改めて思ったが、もちろん口には出さない。今となっては取り返しがつかないわけだし、ただ事態を悪化させるだけだからだ。
「まぁそう言うな。寄生虫は寄生虫なりに前向きに進もうとはしているようだからな。あまりうるさく言っても、こちらが疲れるだけだぞ?」
俺はなだめるように言ってみる。レヴンに対してどれほどの効果があるのかは疑問だとしても、わざわざ煽るようなことはしたくない。
「それです。そういった甘やかす態度が、寄生虫を図に乗せてしまうのです! わたくしの主となられたからには、たとえ寄生虫相手といえども今後はしっかりとなされてもらわなくては困ります!」
俺の方にとばっちりが来てしまったが、どうやら落ち着いてきた様子なのでこれ以上刺激しない方がいいだろう。
「そうだな、考えておく」
前向きに善処する的な当たり障りのない言葉で俺はお茶を濁した。
ただ、それでは納得できない女が約一名いるようで。
「あんたらねぇ、さっきから人のことを寄生虫寄生虫って。いい加減にしなさいよ!」
結構怒っていた。
俺はルーファのことは勝手に怒らせておくとして、とっとと本題に入ることにする。
もうそれほど時間がない。
「じきにチロが敵の本拠地をつきとめる。すぐに出るから準備してくれ」
俺は本題に入った。
「わかりました。わたくしは何をすればよろしいのでしょうか?」
うって変わって殊勝にレヴンが聞いてくるが、俺はまったくそんな態度を信用していない。
「お前は留守番だ」
俺は一言ですませる。たぶんすまないだろうと思いながら。
「は? 今のは聞き間違いですよね?」
なにかとんでもなく信じられないことでも聞いたかのような反応をレヴンが見せる。俺にとっては、そっちの方が信じがたいのだが。
「留守番だ」
俺は少し短めにもう一度繰り返した。