第06話 異世界ウォーズ 後編 - 09 - 主従
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 09 - 主従
俺もできないわけではないが、チロに比べると腕は落ちる。それに、謁見室に居たので見つかった場合やっかいなことになる。だったら、すべてチロに任せてしまった方が合理的な判断と言える。
というわけで、俺はルーファが待機している部屋へと向かった。
今、ルーファは俺が押し付けられたお荷物と一緒にいる。ルーファに対して厄介事を押し付ける形になってしまったが、他に適当な人材がいなかったのだから仕方がない。
俺がドアを開くと、想像通りというか、想像以上というか。こうなるだろうな、という方向性では間違っていない光景がそこにあった。
「だから、アイツはわたしの主なんかじゃないって、なんども言ってるでしょ? それに、あんたに勝手に行動されたらみんながこまるのよ」
うんざりした口調で話しているのはルーファである。
「あの方がわたくしの主となられたのですから、従者であるあなたがわたくしの命に従うのは自明の理です。そして、わたくしがあの方の傍らに付き従うのも当然のこと。速やかにわたくしはあの方の下にまいる必要があります。今すぐわたくしをあの方の下に案内なさい」
相変わらず独自理論を堂々と展開しているのはレヴン王女である。……いや、今はその地位を失って元王女であるが。
「何をしてる?」
少しばかり聞こえてきた内容から概ね想像はつくが、あえて俺は尋ねる。
「ちょうどよいところに参られました、主殿。この者は従者としての自覚がたりませぬ。主たるもの毅然として、従者の躾をいたしませぬとなりませぬぞ!」
さっそくレヴン王女……もとい、レヴンが俺に詰め寄ってきた。
「だから、さっきから言ってるでしょ? 私は従者じゃないって! あんたからも言ってやってよ!」
なにやら腹を立てた様子でルーファが言ってくる。
しかたないので、俺も付き合って説明しておくことにする。
「ああ、こいつは従者なんて良いもんじゃないぞ。俺の家に住み着いてる浮浪者……いや、寄生虫かな?」
俺は普段から思っていることをそのまま伝えた。チロならば、従者と呼べるかも知れないが、ルーファをそこまで評価するのはいくらなんでもチロに悪い。
「あ、あんたね!」
寄生虫扱いされたせいか、さすがに何か言い返そうとしているようだが、的確な表現が見つからず返答に窮した感じだった。
「なるほど、そうでしたか。寄生虫に何かを期待するのは、さすがにわたくしが高望みしすぎました。申し訳ありません」