第06話 異世界ウォーズ 後編 - 08 - 接触
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 08 - 接触
武器商人からの接触は早かった。
俺が、彼らの計画を白紙に戻してしまったので、そうとう焦ったのだろう、取るものも取りあえずと言った様子であった。
魔王ゼグルスとの交渉に俺は直接参加はしなかったが、近くで全ての内容をつぶさに聞いていた。
俺は警護の兵として、謁見室に同席していたからだ。
おかげで、色々とわかったことがある。
今来ている武器商人はヴェリック社という名前の会社で、扱っているのはリヴォーク社製の兵器であるということ。リヴォーク社は最近になって業界内三位にまで上り詰めた、新進気鋭の会社であるということ。それらのことを、売り込みのための謳い文句に織り交ぜながら話してくれた。
流れるような弁舌と、リヴォーク社製の兵器がいかに優れているのかというデータを提示しながら説明を続けていたが、事態が一変したのは円盤が会見場に持ち込まれてからだった。
もちろん、俺が魔王ゼグルスに渡したやつである。
一通りの売り込みが終わったと見た魔王ゼグルスが、配下の者に合図を送り持ってこさせたのだ。
この辺りの演出とタイミングは、伊達に魔王をやっているわけではないと思わせる。
そして、円盤を見たときのヴェリック社の連中の狼狽ぶりは見ものであった。
彼らは円盤のことをリズンと呼び、これをどうやって手に入れたのか聞き出そうとする。
魔王ゼグルスは余裕をもって彼らの質問を聞いた後、他の業者が持ってきたと告げた。
それを聞いたヴェリック社の武器商人は、全員顔色が変わってしまう。
あまりに衝撃がすごかったのだろう。一人がリズンを見せてくれないかと詰め寄ってきた。
もちろん魔王ゼグルスはそれを断る。製品を勝手に競合他社に見せるというのは信義にもとる行為であると伝えて。正論を指摘されて、ヴェリック社側はそれ以上何も言えなくなった。
さらに、魔王ゼグルスに対して、会見の中断を申し込み一旦会見室から退出した後、しばらくしてから戻ってきた。
やはりというか、当然というか、後日改めて会見することを提案してくる。魔王ゼグルスは、鷹揚にそれを認めた。
さて。ここからが、俺にとって本番開始である。彼らの後をつけて、彼らのホームグラウンドとなる世界を探り当てるのだ。
俺は、表にある目立たない場所に控えているチロに向かってサインを送る。
これで、隠密を得意とするチロが追跡をしてくれるはずだ。