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第06話 異世界ウォーズ 後編 - 07 - 縁

第06話 異世界ウォーズ 後編 - 07 - 縁


 魔王ゼグルスの言葉が終わらぬうちに、俺の手の中でリングはどんどん小さくなり、ついには消えてしまった。

 なるほど、俺はひっかけられたようだ。

 一体どういう魂胆なのかは、改めて聞くまでもない。あの厄介物を俺に押し付けたのだ。魔界の指導者として、レヴンを次の魔王として認めることは絶対にできない。だが、親として娘を切り捨てる決断を躊躇していた。そこに、俺が現れたわけだ。このリングをわざわざ作ったのは、もちろん俺のためではない。俺の絶対的な支配下に入ったことで、もうすでに魔界の後継者としての地位は失われた。ということは、レヴンを排除する理由がなくなったということである。つまり、魔王ゼグルスはレヴンを助けたかったというのがことの真相であろう。

 やはり、魔王とは言っても父親であった。その心理を理解することは十分できるが、だからといってそのツケを俺が引き受けることを容認できるか、という問題はまた別の話しである。


「それで、俺が引き受けなくてはならなくなったわけか。迷惑な話しだな」


 俺は遠慮することなく、愚痴を吐き出す。現状として、出来ることはそのくらいだからだ。


「これから先の魔界において、アレが我が娘として生まれてきたからには生きていく場所は存在しないのだ。だが『真名(まな)のリング』で永遠(とわ)に縛られて、他の世界にいる限りマドゥフの安全が脅かされることはない。レヴンを押し付ける形になってしまったことはいくらでも謝ろう。どうか、娘を貴公の側女(そばめ)の一人として置いてやってはくれぬであろうか? 父親である我が言うのもなんだが、中身はともかくとしてレヴンは美しい女に育った。真名の主となった貴公の命令には絶対服従する。強き体をもっているし、かならずや良き子をなすであろう。その一点だけは、保証できる。しつこいようだが、再度繰り返す。レヴンを……娘をよろしくたのむ」


 魔王ゼグルスはその巨体をこれでもかというくらい小さく丸めて、必死に頭を下げていた。

 これほどまでに、娘のことを願う魔王ゼグルスに、心を動かされなかったと言ったら嘘になる。ただ、レヴンにはおそらく伝わらないだろうことを考えると、さすがに心が傷んだ。

 もっとも、魔王ゼグルスはそんなことなど気にしてはいないだろうが。


「まぁ、今更断ることもできないようだし、引き受けるのはしかたない。ただ、気になるのはもう一つの可能性だが……」


 俺はそこで言葉を止めた。

 というのも、魔王ゼグルスの顔を見たからだ。

 鋭く光る目と、口元に微かに浮かぶ笑み。それで、俺の推測が正しいことを確信できたからだ。

 ようするに、魔王ゼグルスは俺との繋がりが完全に切れてしまうことを嫌ったのだ。

 もちろん、魔王ゼグルスが話したことも真実だろう。ただ、それに裏の目的を乗せた。いわば、政略結婚の変形版である。

 さすがに、一国を統べる存在が、ただ単に身内の情だけで動くわけがないということである。

 まぁいい。家はすでに魑魅魍魎とも言うべき女達の巣窟と化している。今更一人増えたくらいなら――けっこう大変だが――なんとかなるだろう。ただ、その負担は確実にチロへと向かうことになるから、どこかでフォローはしてやるつもりだった。


「よし、それではとりかかろうか」


 もう、当面必要なことは一通り話し終えたと判断した俺が席を立つ。


「まいろうぞ」


 魔王ゼグルスも立ち上がった。


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