第06話 異世界ウォーズ 後編 - 06 - 問題
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 06 - 問題
「遠慮せんな。痛いところを指摘してくれる。だが、それに関してはこちらのほうでなんとかする。それより、立ち会うのか?」
俺が指摘した問題は、俺がやってくる以前から抱えていた問題だ。要するに、後継者問題であり、いかなる国であっても抱える普遍的な問題でもあった。ただし、魔界において国を作るというのは他の世界ではありえないほど深刻な問題になる。そういうことである。
これ以上、俺が立ち入るような問題でもないので、そのことに関してこれ以上触れるつもりはない。
当面は目の前の問題に対処しなくてはならない。
「いや、ここは魔王ゼグルス一人でやってもらう必要がある。俺の存在をまだ知られたくない。それに、どんな条件であれ、今は妥結するわけにはいかないので、相手から提示してきた提案はすべて蹴ってくれないか?」
俺のことを知られないようにするのは、相手の世界に乗り込んだ時、自由に動けるようにするためだった。そして、条件を全て蹴るのは、相手の事を知らないこの状況でどのような不平等な条件を飲まされてしまうのか分かったものではないからだ。さらに付け加えるならば、全ての提案を蹴られれば、かならずすぐに反応をみせるくれると予想していた。
「承知した。ところで、これは極めて個人的な頼みだが……」
魔王ともあろう者が、言いづらそうに言葉を詰まらせた。
なにか、ひどく頼みづらいことを頼もうとしているのだろう。興味が湧いたので聞いてみることにする。
「とりあえず、話してみてくれ」
俺が先を促すと、魔王ゼグルスは俺の目の前のテーブルの上に直径が十センチほどのリングを置いた。
手にとって見ると、内側には細かい文字がびっしりと刻まれているが俺には読めない。
「これは?」
俺が訪ねると、魔王ゼグルスはいきなり頭を下げる。
「すまん。こんなことを頼めるような義理などないことなど、重々承知している。貴公に借りはあっても貸しなど無いことも十分に分かっている。その上で、あえて頼む。レヴンを……我が娘をそなたの下においてくれ。そのリングには、レヴンの真名が刻まれている。そのリングを人間が手にすることで、真名の所有者となるように細工した。所有者が死ぬまでその下を離れることはできなくなり、そしてその命令は絶対となる。そういうことなので、どうかよろしくたのむ」