第06話 異世界ウォーズ 後編 - 05 - 資源
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 05 - 資源
だが、魔王ゼグルスが答えてくれた証言によって、俺の疑惑はほぼ表面化したことになる。
「それで、どうなる?」
魔王ゼグルスの質問は単純だ。
分かっただけでは、どうしようもない。この先、どういう対応をするかということである。
「エネルギー資源が係わってくるとなると、事態はいささかやっかいだ。一度や二度追い返したところで、エネルギー資源をあきらめるということはないだろう。ただこちらとしては、やることは一緒だ。ライバル会社の存在を匂わせばいい。後は、相手が勝手に想像を膨らませてくれるはずだ。相手が動けば、もっと多くの情報が手に入るし、連中の本社がある世界も特定できるだろう。ただし、特定するまでの間はけして契約に同意はしないように注意しなくてはならない。こちらには、致命傷になりかねないウイークポイントが存在しているので、注意は怠らないことだ」
ことは、戦争のように単純明快な力の理論ではなくなっている。
これだけの書類を準備してくるとなると、内容はともかく法的には様々な制約を受けているのだろう。もちろん、相手国の法律にこちらが従う義務などないのだが、相手国としてはそのことをもってマドゥフへの侵攻理由となる可能性がある。
案外、本当の目的はそれかも知れないが、こちらとしてはそうなることは避けたかった。ようするに、情報が混乱しているうちに、相手の世界に乗り込んで決着をつけてしまいたいというのが本音だ。
ただ、全面戦争にはならないようにする必要がある。
一番いいのはいち早く国交を結び、国家レベルでの条約を交わすことだ。頭越しにやってしまえば、いくら力があろうと一企業にどうこうできる話ではなくなる。
俺は、そのことを魔王ゼグルスに伝えた。
「また、ナルセにすべてを任せてしまうことになるな。返そうにも返しきれない借りばかりが増えてゆく。すまん」
魔王ゼグルスは俺に向かって頭を下げる。
「よしてくれ。俺は俺の目的のために動いている。貸しなど作ったつもりはない。それより、あんたには最も困難な仕事が残っているだろう。一刻も早く優秀な人材を見つけたほうがいい。ことが終ったら俺はすぐにこの世界を去る。あまり時間はないぞ」
俺には俺の暮らしがあるのだ。たまたまやってきた世界に、必要以上にのめり込むつもりはなかった。
それに、残してきた連中を長時間放置しておくと、周辺地域の安全保障上の問題が生じてくる。
主に、シリンのことだが。