第06話 異世界ウォーズ 後編 - 03 - 密談
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 03 - 密談
魔王ゼグルスはとても興味深そうに、俺の話しに身を乗り出してきた。
「連中は商売人だ。当然、ライバルとなる商人はいるはずだろう。さらに言えば、その背後にいる兵器を製造している会社にもライバルはいる。そうでなくては、こうまでして新兵器開発を行う意味がないからな。もちろん、こいつを開発するために、それなりの予算とリソースが投入されたということは間違いない。つまり、ライバル会社が酷似した兵器を売り込みに来たとなれば、これは一介の販売業者で対応できる問題ではなくなる。内部から機密情報が盗まれたという可能性もでてくるしな。もちろん、それだけでなくありとあらゆる可能性を模索して、対応しようとするだろう。まぁ、彼らにしてみれば、巨額の損失を出しかねない可能性があるわけだから、けして放置できる問題ではないはずだ。とうぜん、これまで裏に隠れていた連中がでてくることになる。そうならざるを得ない。まず、それが目的の一つになる」
俺は詳しい説明を行った。それに、説明には加えなかったが、コピー品とはいえライバル社が先に兵器を実戦投入してしまった場合、自社の商品が逆にコピー品扱いされることになる。事実はともかく、市場ではそういう受け止めをするだろう。そうなれば、開発にかかった費用がそのまま莫大な負債となって重くのしかかることになる。
「どうも、我が統べる世界と比べて、いささか複雑な要因がからんでいるようだが、要旨は概ね理解した。ただ、そううまくいくか?」
おそらく、話がうますぎると思ったのであろう、魔王ゼグルスは疑問を持っている様子だった。
「おそらく、むこうも簡単には信じないだろう。だが、否定することもできない。なにしろ、現物がこうして目の前にあるのだから。この話が本当だった場合のリスクがあまりにも大きすぎる。どんなに胡散臭いと思っても、かならず動く。動かざるを得ない」
俺は、はっきりとそう言い切った。
もちろん、物事に絶対などありえないのだが、確信できるだけの理由が他にもあった。
「それと、もう一つ。彼らの提示してきた条件を詳しく教えてくれないか?」
俺の想像が正しければ、おそらくそれが最大の鍵となるはずであった。
魔王ゼグルスは足元に円盤を置いた後、俺の目の前に書類を置いた。
「それが、契約関連書類ということだ」
厚さが十センチくらいある。パラパラとめくって見ると、小さな文字で書かれている。もちろん、俺にとっては初めてみる文字なので、読むことはできなかった。