第06話 異世界ウォーズ 後編 - 02 - 円盤
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 02 - 円盤
少なくとも、形的にはほぼ完璧のはずだ。実際に動くかどうかはやってみなければ分からないが、コアがないのでどうにもできない。もっとも、コアがあったところで、今のところ操作手順を解析する方法が存在しないので使い物にはならない。
「これで、どうしろと?」
言葉少なに、魔王ゼグルスが聞いてくる。もちろん、俺に説明を求めているのだ。
「最初に言っておくが、これから接触してくるのは、おそらく軍事産業の中でも、死の商人と呼ばれているたぐい連中だ。ただ、これを作っているのは別の組織である可能性が高い。もちろん、根っ子のところでは繋がっているのは間違いないところだろうが、本体はかならず別にある。表の顔があくまで本体であり、こういったダーティな組織は少しでも疑われるようなことがあれば、すぐに切り捨てられるようになっているはずだ。いわゆる使い捨ての駒だな」
自分の世界における軍需産業がらみの情報を交えつつ話していく。
俺は、魔王ゼグルスに渡した円盤を軽く指でつつきながら話しを続ける。
「俺の感想になるが、こいつは開発中の機体として扱っていたようだが、実際はほぼ完成品と見ていい。ただ市販品として量産化に持っていくためには、実戦におけるデータと実績がどうしても必要なんだろう。そこで俺の世界で実証試験を行っていた。俗に言うベータテストだな。それとは別に実戦使用して実績を積み重ねておこうとした。なにしろ、実戦証明済みの兵器ともなれば、高値で売れるからな。そのために選ばれたのがマドゥフとルワース間で行われている戦争の戦場だった。だが、肝心なことろで問題が起きた。魔王ゼグルスが契約を見送ったことだ。それでも連中は敗色が濃厚になればいずれ契約するだろうと高をくくっていた。ところが……」
俺が一拍間をおくと、ゼグルスが後を続ける。
「魔王軍は勝利を収めて、ルワース軍は壊滅的な状態に追い込まれてしまった、ということか。だが、それでこれをどう使うつもりだ?」
魔王ゼグルスは自分が抱えている円盤を俺に向かって示しながら、そう質問をしてくる。
今までの話しはすべてその質問に繋がるために、前提となる話しであった。当然、ここからが本番である。
「別に使うつもりはない。ただ、これを見せてこう言えばいい。『他からも売り込みがあった』と」
前置きに比べると、極めて短い説明だったが、これがこの計略の肝である。
「ほう? それで?」