第06話 異世界ウォーズ 後編 - 01 - 罠
第06話 異世界ウォーズ 後編 - 01 - 罠
俺はちょっとした罠を仕掛けることにした。
非常に単純極まりない罠だ。
そのための材料ならいくらでもあった。むしろ、処分に困っていたくらいである。
一度完全にバラして組み立てなおしたので、大量にある残骸から破損の少ない部品を集めて組み立て直すことはさほど難しいことではなかった。
要するに、あの円盤を一つ組み立てたのである。
この罠に完動品はいらないので、コアを組み込む必要はない。
それなりのものに見えれば、それでいいのだ。
武器を売り歩く死の商人は、俺たちがマドゥフにやってきていることを知らない。
それが、こちらにとって最大のアドバンテージであり、当然連中にとってのウイークポイントということになる。
それを使って、連中の手の内をさぐるのだ。
チロとルーファをうまく使えば、連中の本社がある異世界へのゲートを開けるかもしれない。もっとも、敵味方のテクノロジー格差を考えれば慎重にやる必要がある。だがゲートを開く先が分かれば状況は一変する。
今のままでは、手も足も出ない状況が続くだけなのだ。いずれにしせよ、やるより他にないということである。
この計略には魔王ゼグルスの協力は不可欠であった。もちろん、おおっぴらに話せるような内容ではないので、魔王城の地下にある魔宝殿を使った。
本来は宝物庫であったのだが、魔界政府の国庫そのものであり、今度の戦争によって随分とその量を減らしてしまっていた。
ただ何処よりも秘匿性の高い場所なので、密会を行うにはうってつけと言える。
俺は今その場所で、魔王ゼグルスと会っている。
「連中はすぐにでも接触を図ってくるはずだ。問題は、その時の対応なのだが……」
俺が一旦そこで話しを切ったのは、魔王ゼグルスの反応を見るためだ。
「何か、策がありそうだな?」
魔王ゼグルスは俺の様子を察して逆に聞いてくる。
どうやら、ゼグルスも乗り気なようなので、俺はこのまま話しを先に進めることにした。
「まずは、その場にこれを持ち込んでもらいたい」
そう言って、俺は抱えていた円盤を差し出した。俺が持つと結構な大きさだが、魔王ゼグルスが持つとそれほど大きくは見えない。
「これは、連中の?」
見たことがあると言っていた。説明するまでもなく承知していたようだ。
「そうだ。俺が破壊したものから継ぎ接ぎしてそれっぽく組み立てたものだ。コアがないから動かないが、限りなく完動品に近いと思ってもらってかまわない」
たいへん長い間お待たせいたしまして申し訳ありません。
他の作品が想定外に長くなってしまいました。
これから、できるだけ短期間で後編最後まで連載いたしますので、宜しくお願いします。