第06話 異世界ウォーズ 前編 - 38 - 超える力
第06話 異世界ウォーズ 前編 - 38 - 超える力
「これから見せるのは、あなたと闘うためではない。別次元の強さというものが、存在するんだということ、それだけと受け止めてもらいたい」
俺はそれだけを言うと、フェイズ3へと一気に以降する。
強力な衝撃波が起こり、この惑星全体を震わせる。
魔王ゼグルスは衝撃波をまともに受けて、少し落下しかけるがそれだけでかろうじて耐えてみせる。
フェイズ3の衝撃波を至近距離で受けて意識を保っていられるだけでも大したものである。
俺は右手を頭上に掲げる。都合のいいことに、上空を分厚い雲が覆い尽くしている。
俺は遠慮なしに気を放った。
一瞬で雲が消え失せる。晴天が広がり、まばゆいまでの太陽が降り注いできた。もし、この気砲を地上に向けて放っていれば、惑星そのものが崩壊する。
「今の状態の俺が同レベルの敵と本気で戦えば、マドゥフは保たない。しかも、俺にはここからさらに上がある」
それだけ言うと、俺はフェイズ1に戻した。これで、魔王ゼグルスとほぼ同格にまで戻ったことになる。
「凄まじいな。これほどの力が存在するとは、想像すらしたことがないぞ」
雲の消え去った上空を見上げながら、魔王ゼグルスはそんなセリフを漏らした。おそらく、俺に向けて言った言葉ではないだろう。
俺は黙って魔王ゼグルスの言葉を待っている。
「ナルセの実力は分かった、十分過ぎるほどな。だが、その力、このマドゥフにおいては使わないで欲しい。これは、魔界を統べる者としての頼みだ」
魔王ゼグルスはそう言って頭を下げた。それしかないと分かっていても、なかなか出来るようなことではない。改めて、魔王ゼグルスの統治者としての能力の高さを確認することができた。
「もちろん、そのつもりだ。俺の目的はルワースの背後にいる連中の世界に潜入して、その正体を突き止めることだ。そのためには出来る限りの協力を惜しまない」
俺は改めて自分の目的を告げる。
「その言葉、信じよう。久々に余が全力で拳を交わした相手。貴公の言葉が偽り無きこと十分感じることができた。……では、魔王城に戻ろうか?」
どうやら、魔王ゼグルスの信頼を勝ち取ることに成功したようであった。
だが戻る前に、
「いいのか? 下に落とした物を拾わなくて?」
俺と戦う前に剣と防具一式を地上に放り出している。
すると、魔王ゼグルスは呵呵と笑った。
「あれは、我の錘よ。剣を使えば攻撃力を、防具をつければ速さを大きく制限することができる。やり過ぎることのないように、力を押さえていたのだ。だが、それを外しても遠く及ばぬ相手がいた。あれは、余のおごりとなっているのだと気づいた。ここから上を目指すに、あれはもう必要ない」
なんの未練もなく、魔王ゼグルスは言った。これならば、魔王ゼグルスはさらなる力を手に入れることができるかもしれない。
俺はそんなことを思ったが、口に出したりはしなかった。
「それでは魔王城に」
今度は俺が先に誘う。
「むべなるかな」
魔王ゼグルスが応じる。
俺と魔王ゼグルスは魔王城へと帰還した。
< 後編へ続く >
後編は、少しお待ち下さい。近いうちに再開する予定です。