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第02話 VSヴァンパイア!-05 - 魔法と物理

 残った下半身がゆっくりと雪の上に倒れこみ、そのまま動かなかった。

 やっぱり、木っ端微塵にふっ飛ばされたら、再生することは出来ないようであった。

 もっとも、俺はかつて細胞一個から再生始めるやっかいなやろうと闘ったことがあるから、確信があったわけではない。

 とりあえず、シリンの魔法(ファイアーストーム)に便乗しておいての様子見のつもりもあった。

 様子見で決着がつくなら楽できるし。

 ただ、想像以上に派手な惨状になってしまったので、後悔していないこともない。

 幸いにも、月明かりはあるといっても今は夜中なので、その惨状がはっきりとは見えないことが救いだろうか。


「い、今、な、なにをやったの?」


 顔だけでなく全身のあちこちに、細かい肉片やら血痕やらがへばりついたシリンが俺の方を振り返りながら聞いてくる。


「極端に加熱されていた所に、氷の塊を放り込んだから、水蒸気爆発を起こした。それだけだ」


 俺は、自分の科学的知識を披露する。

 と言っても、現代人なら概ね知っているようなありふれた知識ではあるが。


「すいじょうきばくはつ……って、あなたからはまったく魔力を感じなかったですのに、一体どんな魔法なのです?」


 そんな寝ぼけたセリフを吐いたのは、それまで地面にしゃがみこんでいたルーファである。

 物理現象と魔法の区別もつかないとは、想像以上にこいつらの文明レベルは遅れているようだ。


「気にするな。そんなことより、用を済まして、さっさと帰るぞ。こんな、クソ寒い僻地に、いつまでもいられるか」


 俺としては、今の時点で考えられる限り最も建設的な意見を提案する。

 腰を抜かしている斉藤が――寒さなのか恐怖なのかは判断つきかねるが――奥歯をガチガチと鳴らしながらウンウンと頷いていた。

 一時的には物珍しさもあって楽しめるだろうが、俺たちのような文明社会の恩恵にどっぷりと浸り込んでいる人間にとって、道を歩いているだけで命の危機に晒されるような環境はどうにも受け入れがたいものがある。

 際限のないバトルに明け暮れていた俺が言うのもあれなのだが。

 ただし、繰り返しになるが、そのことを知っている者は俺以外に存在しないので、まったく問題はない。


「そうしたいのは山々なのですが、肝心の術士の居所がわかりません」


 やたらと残念そうに、ルーファが答える。


「そうか? 心当たりなら、思いっきりありそうなもんだがな?」


 俺は針葉樹林とは道を挟んで反対側に立っている、どう見ても不気味で怪しげな、月明かりの中に浮かび上がっている、西洋風の城を見上げながら言った。


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