第06話 異世界ウォーズ 前編 - 35 - 打開を求めて
第06話 異世界ウォーズ 前編 - 35 - 打開を求めて
俺は断定するように言い切った。
というのも、テクノロジーの格差というのはそのまま総合力の格差であり、戦争においてこの差を逆転することは奇跡でもないと無理な話しだからだ。
もちろん、戦争とは違う戦い方もあるのだが、それは互いに終わりのない泥沼に突入するということになるので、この場で勧めるつもりはない。
それにもう一つ、連中と全面対決をするためには、絶対に確認しておく必要があることが存在したのである。
「ない……か」
地図を睨みつけながら魔王ゼグルスが吐き出すように言った。
おそらく、自分でもそう考えていたのだろう。その上で、ずっと何か手がないか考えていたのだ。
そのことをあらためて示した上で、俺の方から提案する。
「ただ、一時的に撤退させるだけなら、出来ない話しではない。ただし、下手に勝利するとルワース軍を支援している連中がさらなる支援を行ってくることは確実だ。そうなれば、次はさらに苦しい戦いになる」
俺は希望とそれ以上の絶望を同時に提案してみせる。
「ぐっ……。たしかに、そうなろうな。だが、どの道今を勝たねばマドゥフに明日はこない。話してくれ、たのむ」
魔王ゼグルスはためらうことなく、俺に頼んできた。
さすがに一つの世界を統べる存在である。度量の広さは相当なものだ。
むろん俺も、そのつもりで話したので当然その願いに答える。
「俺に指揮を任せて貰えれば、やってみせよう。ただ、問題は勝利した後のこと。背後にいる連中の狙いを知った上で、相手の世界を特定し乗り込まなくてはならない。それができなくては、相手側の一方的な交渉に応じざるを得なくなる。だが、勝利を得た直後、かならず連中はなんらかのリアクションを見せるはずだ。それを捉えて、特定する」
非常に大雑把な作戦であったが、これで十分に俺が言いたいことの趣旨は伝わるはずだった。
「なるほど……確かに、この状況をひっくり返すためにはそれ以外に方法はないだろうな。だが、我が軍勢を貴様に託すには、力を示す必要がある。余と互角に戦えるくらいの力があることを、な。魔界とは所詮、力の原理によって立つ世界。力なき者に何者も従うことはない」
そう言った魔王の顔は、それまでの支配者としての顔ではなく、戦う戦士の顔となっていた。
殺気を孕んだ魔王マドゥフの視線をさらりと受け流しつつ、俺はすっと立ち上がる。