第06話 異世界ウォーズ 前編 - 33 - 兵器産業
第06話 異世界ウォーズ 前編 - 33 - 兵器産業
「ほう? どうして分かった? その通りだ、余に対して今の戦況を逆転可能な武器があると持ちかけてきた。だが、余はそれを断った。すると、ルワース軍に勇者が現れた。聖剣を携えた勇者タリィは我が軍勢に切り込んできては、好き勝手に蹂躙しているのが今の状況だ」
その言葉に、俺は頷いた。
実にわかりやすい構図である。
その勇者はおそらく、連中のデモンストレーションに使われているのだ。勇者が使っているのは、連中が渡した武器だろう。一つだけ渡して、その威力を示してみせる。当然その目的は魔王ゼグルスに自分たちの作った兵器を売り込むためだろう。
これで、俺の推測がほぼ正しかったことが証明された。
連中は異世界に魔法兵器を売り込んで利益を出す商人だ。手口は二つの異世界を戦わした上で、その両方に兵器を売り込む。典型的な死の商人と呼ばれるやり口であった。
一旦その口車に乗ったら、永遠に連中の作った兵器を買い続けなくてはならなくなる。そうでなければ、今戦っている敵に降伏するかだ。
連中は、そんなことなど出来ないことを承知の上でやっているのだろう。むろん、万が一和平が成立しそうな時は、阻止するために働きかけてくることは想像に難くない。
「それで、円盤を見せられたか?」
俺の質問に、魔王ゼグルスは頷いた。
「完成間近の最新兵器だと言っていた。これを買えば戦局はいつでも変えられるという触れ込みだったが、まだ完成はしておらんようだ」
これも俺の推測通りだった。相手の正体がわかるとその行動も推測しやすくなる。もちろん、まだまだわからないことの方が多かったのだが。
「それで、購入を断ったと?」
その言葉は質問というよりは確認だ。すでに魔王ゼグルスは、断ったと言っている。
「この話を受ければ、次は敵に同じ物を売りつけるに決まっておろう。いかに戦況が苦しかろうが、手持ちの戦力でなんとかする他あるまい」
その戦力も、下の状況を見る限り極めて怪しいものだが、そこは黙っておく。言っても先のないことだからだ。
ただ、ここまでの話しで、魔王ゼグルスがなぜ俺たちをここに呼んだのか理解できた。
「それで、情報が欲しかったわけか。ルワースの支援者になっている連中を出し抜くための手がかりが得られるかもしれないと」
俺は、単刀直入に指摘してみせる。魔王ゼグルスがまったく見も知らぬ俺に、腹を割って話したお返しと言ったところだ。