第06話 異世界ウォーズ 前編 - 31 - 魔界という名の異世界
第06話 異世界ウォーズ 前編 - 31 - 魔界という名の異世界
周囲を見ると結構な数のモンスターがいて、体長三メートルを越すような大柄な人型モンスターもいる。逆に一メートル程度の小柄の人型モンスターもいた。それに以外にも、人型ではない獣のモンスターもいる。たいして統制が取れていようには見えないが、それでもこんな連中が一箇所に集まっていられるということを考えると、理由は一つしか考えられなかった。
どうやら、俺達三人はモンスターの軍勢のど真ん中に降り立ったようである。
だとすれば……。
「二人とも、俺の許可がないかぎり動くなよ」
俺はチロとルーファに指示を出す。ルーファは不機嫌そうな顔をしたが、チロは真顔で頷いた。
ほどなく部隊の指揮官なり、責任者が出てくるはずだ。
俺は、それを待つつもりだった。
なので、その前に決定的に敵対する関係にはなりたくなかった。
なにしろ、まったく現状がつかめていない状況なのだから。
案の定、すぐに浅黒い皮膚を持つ尖り耳をした女がでてきた。おそらく、ダークエルフというやつだろう。ルーファの同類である。
「貴様らに、魔王陛下がお会いになられるそうだ。ついて参られよ」
俺の横ではルーファとチロがそれぞれ翻訳のマジックを発動させている。俺にはその必要はないのだが、チロが気をきかせて俺にもかけてくれた。
「交渉は俺がやるから、二人は黙っていてくれ」
案内される途中で俺が指示を出すと、さすがにルーファも不満そうな態度はとらなかった。
案内された部屋は俺基準から言えば、相当に広い部屋だった。
中央には石造りの円卓があり、その上には地図が広げられている。
俺は上空から見ていたので、それがこの辺りの地図ではないことくらいは見てとれた。
円卓の地図を覗き込んでいるのは、下にいた連中とは桁違いの気を持った男だった。
身長は二メートルほどもある。人間基準だと大男であるが、モンスター基準だと小柄の部類に入るのかも知れない。
俺はあえて話しかけずに、相手の出方を待つ。わざわざ圧倒的に情報量の少ない俺の方から先に動くメリットがないからだ。
「いつまで立っているつもりだ? そこに座り給え」
大男が言ったので、俺は両脇の二人に目で合図を送り、手近なイスに座った。
「余は魔界の王ゼグルス、マドゥフを統べるものなり。まずは、そなたらが何物であるのか、話されよ」
自ら名乗った後、俺たちに質問してくる。どうやら、それなりの礼儀は守る相手であるようだ。