第06話 異世界ウォーズ 前編 - 30 - 追跡
第06話 異世界ウォーズ 前編 - 30 - 追跡
このまま上昇を続けたら、成層圏を突き抜けることになり、とてもではないがルーファは持たない。
さすがに引き返すしかないか、と思われたとき上空に青白い光を放つ円形のゲートが開いているのが確認できた。
「後少し、息を止めていられるか?」
俺の言葉にルーファが黙って頷いた。
かなり苦しそうである。
円盤がゲートをくぐり抜けたのとほぼ同時に、俺もチロとルーファを抱えてゲートをくぐった。
だが問題はゲートをくぐり抜けた後だった。
高度はほぼ同じなのだが、円盤はまだ上昇を続けている。
これは、間違いなく宇宙空間をめざしている。
ルーファを抱えている以上、これ以上追尾することは不可能であった。
というか、ルーファは限界を超えている。俺の腕の中で意識を失っていた。
今すぐに、地上に戻る必要がある。もはや、一刻の猶予もない。
俺は断熱圧縮により高温になりすぎない程度の速さで落下する。それでも、音速を超える程度の速さはでているのだが、遅く感じられた。
地上につくと、すぐにルーファの蘇生を試みる。心肺停止状態で数分間。脳にダメージがあるかどうか極めて微妙なところだ。
肋骨にダメージがいかないよう、『気』を使った心臓マッサージを繰り返すと鼓動が再開して同時に息を吹き返す。
頬を叩きながらルーファの名前を繰り返し呼ぶと、ルーファが目を覚ました。
「い、いたいわね……」
ぶつぶつと文句を言いながら、ルーファは立ち上がった。どうやら深刻な問題はないようである。
俺も立ち上がって周囲を見回す。
どうやら、偶然であるとはいえ、少々まずい場所にやってきたようである。
というのも、周囲をモンスターに囲まれていたからだ。俺にとって脅威になるような連中ではないが、俺がモンスターにとって脅威になることは間違いない。
この世界がどういった世界なのかわからないうちに、妙な介入はしたくなかった。
まぁ、俺はこういった判断ができるのだが、最大の問題はチロである。俺に向かってきた連中に、容赦するようなことはしないだろう。
今も比較的に体が小さく、わさわさと大量にいる緑色をした皮膚を持つ人間型のモンスターが俺たちを見つけて、手にした斧や槍などの武器を掲げて騒いでいる。
もちろん、チロはとっくに戦闘態勢にはいっており、少しでも襲いかかってくる兆候が見られたら、すぐさま全滅させかねない様子だった。