第06話 異世界ウォーズ 前編 - 27 - ルーファと交渉
第06話 異世界ウォーズ 前編 - 27 - ルーファと交渉
はっきりいって推測だらけであるが、それでもここだけは伝えておかないといけないという俺の推論を伝えた。
むろん、これは現代人の俺からの視点であって、ルーファにはどうしても理解しがたい部分があったようだ。
「軍需産業? 自動的に行動するというのは、ゴーレムに似てるようだけど……連携して攻撃してきたりはしないし、ましてやあれだけの数となると……。やはり、わたしの知っている魔法とは違うようね」
どうやらルーファは自分なりの理解をしてくれたようだ。破壊一辺倒のシリンとはここら辺りが大きく違う。
「これは今の推論の延長線上にある仮定だが、敵は実戦データを回収したがっているのではないかと俺は考えている。もしそうなら、稼働可能な機体があれば、その機体を回収するための方法が準備されているはずだ。俺は、それを利用して敵地に乗り込もうと思っている。ただ、そうなったとき、この世界に帰還できなくなっては意味がない……」
そこまで話した時、いきなり話しに割り込んできた者がいる。
「チロも一緒に連れて行ってください! 絶対にお役に立ってみせます!」
仕事から帰ってきたチロだった。少し前に帰ってきたのには気付いていたが、俺は承知の上で話しをしていた。
「チロは仕事があるだろう?」
俺の言葉に、チロは少し憤慨したように話す。
「仕事は他に探せば見つかりますが、ご主人様は一人です! チロは……チロはご主人様のいない世界で生きていたくはありません!」
まるで愛犬の従順さで、どこまでもご主人様命のチロの言動に、ルーファは若干引き気味であったが、それでも了承の意を示す。
「わかったわ。わたしも付き合うから。さすがに、あなた抜きで今の暮らしが維持できるとは思ってないもの」
こっちは打算の極地だが、俺にとっては手を貸してくれるならば理由などどうでもいい話しだ。
「すまん、助かる。では、すぐにでも行動したいのだが、行けるか?」
次の襲撃があった後では、俺が捕獲した機体の回収が行われなくなる可能性がある。なので、そうなる前に行動を起こしたかった。
するとルーファは、名残り惜しそうに腕の中に抱えたアイスを見た後、そこからひとすくい口に運んで立ち上がる。
「しかたないわね……」
丁度、風呂からあがったばかりのシリンにアイスを渡す。
「これ、全部たべてもいいわ。でも留守の間、妙なトラブルは起こさないように気をつけなさい」
シリンに釘を刺しておこうというルーファの気持ちはよくわかる。ただ問題なのは、相手がシリンだということである。