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第06話 異世界ウォーズ 前編 - 15 - 王女の言い分

第06話 異世界ウォーズ 前編 - 15 - 王女の言い分


「ほぅ? それで?」


 おれは、完全に感情を押し殺した声で、さらなる説明を求める。


「勇者は私を殺すと言っていましたが、対等な条件の下で話しあえばきっとわかってもらえると確信していました」


 この期に及んでまったくブレることなく、自分の信念を口にする。ある意味凄いが、凄さの角度は斜め方向に向いている。


「そして、穴の底から助け上げた結果、勇者との戦いが始まった、そういうことですか」


 俺は、最後の纏めを口にする。


「そうです。あなたが、現れなければかならずわかってもらえたはずです。戦いからは何も生まれません!」


 その言葉を聞いて、俺はこの世界から逃げ出したくなった。

 もちろん、これが初めてというわけではない。なにしろ、現実の理想がぶつかった時、現実を否定して理想を受け入れるような相手と付き合うのは、酷い虚無感しか感じない。それが、個人的な問題に終始するならどんな理想を掲げようと好きにすれば、の一言で済むのだが、国を代表するような立場の者であれば話しは違う。その判断は大勢の住人に影響を与えることになる。この場合だと、俺への影響が大である。


「これまでも何度となく言いましたが、戦いを起こさないために対話をするのはかまいませんが。戦いが始まることを想定せずに行動することはやめていただきたい」


 虚しい気持ちに蝕まれながらも、俺は言っておく。

 とうぜん、この後どんな返事がかえってくるかもわかっているのだが。


「だからこその話し合いです。この世界に、話し合いで解決しないことなどないはずです。根気よく、相手を説得すればかならずわかってもらえるはずです。わたくしはそう信じています!」


 レヴン王女は自身の信念に基づいてそう言い切った。

 常に自分の信念が優先して、他人の説得も現実の結果も無視するような魔界の王女様が、敵対する相手を説得できると力説しているのだ。俺の目には非常に質の悪い喜劇を見せられているようにしか見えない。

 とはいえ、王女様は信念の人だ。俺ごときの説得が通用する相手ではないことは、これまでのことでわかっている。


「ほどほどにおねがいしますよ。それで、そこに転がっている勇者殿の処置はどうされますか?」


 また、穴蔵に放り込んでもよかったのだが、この調子なら懲りることなくレヴン王女が引っ張り上げることだろう。この忙しいときに、一々付き合っている暇はない。

 何か他の方法を考えた方がいいだろう。


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