第06話 異世界ウォーズ 前編 - 14 - 力による話し合い
第06話 異世界ウォーズ 前編 - 14 - 力による話し合い
かと言って、少なすぎると作業がはかどらない。しかも、ダークエルフの中には設営作業が苦手な者も多いので、そういった者はすぐに交代させる必要があった。
ある意味、作戦指揮を執るより厄介な作業を淡々とこなしている俺のところに、頭を抱えたくなるような報告がもたらされてきた。
あろうことか、レヴン王女が勇者タリィと戦っているというのだ。
どうしてそんなことになった、とは思わなかった。
勇者タリィがあの深い穴の底から一人で勝手に出てきたとは思えない。
まちがいなく、レヴン王女が勇者タリィを引っ張りあげたのだ。
そして、勇者タリィは真っ先にレヴン王女を斃そうとした。
まだ、レヴン王女が生きているということは、おそらく聖剣ホランドはまだ土の中に埋まったままなのだろう。
俺が加減を間違ったことが幸いした。平和原理主義者とは言ってもレヴン王女は魔王の娘だ。そこらの魔物などよりは遥かに戦闘力が高い。少なくとも、素手の勇者と互角に戦えるだけの戦闘力は持っているということだ。
内心の思いはともかくとして、さすがにこの戦いを放置しておくことなど出来ないので、現場に言ってみる。
すると、すでにかなり激しい戦いが繰り広げられた後で、両者共にノックアウト寸前の状態になっていた。
「一体これは、どういうことか、説明願いますか? 王女殿下」
俺は、勇者タリィのことは完全に無視してレヴン王女に説明を求める。
そのことがよほど不満だったのか、勇者タリィは奇声をあげて俺に向かってきた。
俺は、つっこんでくる勇者タリィの背後に回ると、首筋に軽く手刀を入れる。
迷走神経に強い衝撃を受けた勇者タリィはまるで糸の切れたマリオネットのように前につんのめって、ゴロゴロと転がった後動かなくなる。
俺の入れた手刀より、その後のダメージの方が何倍もすごいことになってそうだが……俺はたいして興味はなかった。
そんなことより、今はレヴン王女である。
「準備はすんだのですか?」
レヴン王女は俺の質問には答えずに、責めるように俺にそんなことを言ってくる。
「王女殿下がいなくなっては、準備する意味がなくなってしまいますからね。それで、どうしてこの状況になったのか、納得のいける説明はいただけますか?」
俺は、いつも以上に丁寧に聞いた。というのも、少しばかりムカついていたからだ。
「もう、我々に勇者の捕虜は必要ないでしょう? ですから、開放してさし上げたのです」
何らかの信念の下にきっぱりと王女殿下は言い切った。