第06話 異世界ウォーズ 前編 - 13 - 勝利宣言の……
第06話 異世界ウォーズ 前編 - 13 - 勝利宣言の……
纏まって軍事行動をやれてはいるが、それは力による箍が嵌められているからに過ぎない。魔物という生き物の本質は法とか秩序とか対極にいる連中なのだから。
「わ、わかりました……」
しばらくの沈黙の後、掠れた声で絞り出すようにレヴン王女は返事をする。
ただ、俺はそれでは納得しない。
曖昧な返答では、いざというときひっくり返される可能性がある。
とうぜんここは、はっきりと言い直してもらう。
「王女殿下。文書にしろとまでは言いませんが、ここは適当な答えが了承できる場面ではありません。今一度、明確な言葉で言い直していただきたい」
俺の言葉に、レヴン王女は何か言いたそうにしていたが、その言葉を飲み込んだようだ。
その上で俺を絞め殺したさそうな目で見ながら、一字一句絞りだすように言葉を口にする。
「魔王軍の勝利を宣言し、我が名において宴を開くことを、皆の前で伝えましょう」
俺としては、まだまだ不満がある返答であったが、あまり多くを望んでは全てを失うこともある。
「了解しました。それでは、すぐにとりかかるので、準備ができるまでの間、適当にしておいてください」
理想としては、手伝ってくれることだが、理想というものは手に入らないからこそ理想であるということも承知している。
というわけで、俺はさっそく準備にとりかかった。
ただ、この時の俺は、すこしばかりレヴン王女のことを甘く見ていた。
正確には、レヴン王女の信念というか理想主義のお花畑さをである。
俺は、今夜の宴に必要となる食材を運ばせ、それを調理するための頭数を各部隊から引き抜いて確保する。すでに、前線から引き上げてくる部隊も多くいたが、給餌ができる者は限られているので、こういった対応をするしかなかったのである。
ようするに、俺の役割は人員の配置であって、実際に料理を作るわけではない。同時に、レヴン王女が勝利宣言を行いそのまま宴になる場所も設営する必要があった。
難点なのは、実際にこの作業を行うのはコボルト共であり、ダークエルフやヴァンパイアが管理していたとしても、すんなりとはいかないことである。
俺は、人員配置を行って大まかな指示を出すだけなのだが、これが中々やっかいな作業であった。コボルトの数を増やしすぎると、監督をしているダークエルフの目が届かなくなり、好き勝手な行動を取り始める。