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第06話 異世界ウォーズ 前編 - 08 - 平行線

第06話 異世界ウォーズ 前編 - 08 - 平行線


 まったく説得力に欠ける説得をするレヴン王女に対する勇者の反応はと言えば。


「その必要はない。魔界の住人を殲滅すればいいだけの話しだ。真っ先に貴様を殺してやる」


 とことん好戦的な対応だった。そもそも、こういうやつでなければ、勇者など務まらないということだろう。

 もちろん、俺にはそんなことなど関係ないので、この不毛極まりない話し合いに割って入る。


「王女殿下、そろそろ勝てそうなんで、後をお願いします」


 俺は短くそういった。余計なことを言ってへそを曲げられると鬱陶しいことになりかねない。勇者との会話でもわかる通り、王女殿下はガチガチの平和原理主義者なのだ。


「それでは、また多くの犠牲者を出してしまったのですね……。なんと、罪深きことでしょう。あなたは、罪の意識を感じることはないのですか?」


 俺は、まるで凶悪犯でも見るような目で睨みつけられた。

 言いたいことは山程あったがやめておく。

 俺が正面で戦えばすぐに終わるようなことを、めんどくさい指揮までやってわざわざお膳立てをしてやったのだ、この程度のことでリセットなどできない。


「その当たりの話は後日聞きますから。とり急ぎ、指揮所に向かってもらえませんか?」


 俺は、なるだけ当り障りのない言葉を選んで、レヴン王女を急かした。


「しかたありませんね。ただし、私が指揮を執ることなどけしてありませんからそのつもりで」


 内心、とことん面倒くさい女だと思いながら、俺は黙って指揮所のある方角に向かって右手を差し伸べ頭を下げた。

 見る人間が見たら、慇懃無礼な態度だと称するであろうが、もちろんその通りである。

 俺のことを親の敵みたいな目で睨みつけた後、レヴン王女は指揮所へと向かった。

 後に残った俺は、勇者と対峙する。


「俺の名前はナルセ。今のところ魔王軍で軍師をやっている。君の名前を聞かせてもらえないか?」


 深い落とし穴の底を見下ろしながらの質問だ。最初は当り障りのない所から始める。


「タリィだ。こんな姑息な罠を仕掛けたのは貴様か? 卑怯者め。ここから出して、私と戦え!」


 敵意をむき出しにした答えが帰ってきた。姑息な罠というよりは、古典的な罠、あるいは使い古された罠という表現の方が適切だろう。さらにいえば、俺が卑怯者だという表現はいささか過大評価が過ぎるというものだ。こうも見事に落とし穴に落ちてくれた勇者タリィあってこその話しなのだから。

 もちろん、そんな指摘をわざわざ口に出したりはしない。火災が発生している最中に、わざわざ油を投げ込むような趣味は俺にはなかった。


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