第06話 異世界ウォーズ 前編 - 07 - 決着寸前
第06話 異世界ウォーズ 前編 - 07 - 決着寸前
薄くなった陣形を小数の遊兵部隊で分断して襲いかかる。
分断され包囲された部隊を救出するために、さらなる後続部隊を送り込んできた。だが、これはまるでデジャヴを見ているようなもので、遊兵部隊で分断した後小数になった部隊を殲滅する。
結局これを三回繰り返したところで、敵部隊はようやくその痛手の大きさに気がついて救援部隊を送ってくることをやめた。
俺ならば、一旦兵を引いて陣形を立て直すところだが、そこまでの判断をできる参謀は敵部隊にはいないようであった。
もし、いたとしても採用されなくては同じことであるのだが。
ただ、この状況は俺というか魔王軍にとってありがたかった。
敵の陣形には突出して痛打をくらった傷が残ったままである。わざわざ敵が弱点をさらしたまま突っ立ている状況なのだ、最大限に利用させてもらうことにする。
俺は、遊兵部隊を一旦ひかせつつ、楔型の陣形をとり本陣そのものの分断を計る……というのが理想であるが、正直そこまでの作戦行動は魔王軍には無理だ。
なので、遊兵部隊を後退させた後、単純に全部隊を進軍させる。俺は前線にでるつもりはないので、この場で指揮を執り続けるが、戦闘部隊は全て投入する。
ここがこの戦いにおける勝負どころである。戦力をけちったところで、勝機を逃すだけだ。
適切な陣形を執ることができなかったために、敵戦力を効果的に削るとまではいかなかったものの、それでも敗走にもっていくことは十分に可能であった。
敵陣はもう総崩れ寸前であり、反撃するだけの力は残されていなかった。
もうひと押しで完全勝利を達成できるというところまで追い詰めたところで、俺は一旦指揮所を離れる。
ここから後、指揮を執るのはレヴン王女の役目だ。なので、彼女を呼びに向かったのだ。
ところが、レヴン王女は勇者と怒鳴り合いをしている真っ最中だった。
たぶんそうなるだろうな、と思っていた通りの光景がそこにはあった。
レヴン王女の頭の中はお花畑だ。一方勇者は超リアリストの殺戮マシーンだ。こんな二人の話し合いがまとまるわけがない。
深く考えなくても、誰もが簡単に予想つく程度のことであった。
もちろん、レヴン王女本人を除いての話であるが。
「だから、あなたのその考えが間違っています。話しあえば、かならずわかり合えます。全員が武器を捨てさえすればいいのです。そうすれば、かならずや平和な世界が訪れることでしょう。だから、まずあなたから武器を捨ててください」