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第02話 VSヴァンパイア!-02 - 異世界

 とりあえず空には星が煌めき、なんとなく赤みを帯びた月が輝いている。

 俺の左手には、何やら中世欧州の古城めいた建物があり、右手には不気味な雰囲気の針葉樹林があった。

 俺が立っているのは、その間にある幅10メートルほどの舗装されていない道で、周囲には妙な気配がちらほらと感じられる。

 しかし、問題なのはそんなことではなく、見渡すかぎりの世界が白銀に染まっていることだ。

 寒い。それもかなり寒い。間違いなくこれは氷点下だろう。対するに、今の俺の装備は夏服である。明らかに、TPO的に無理がありすぎる状況であった。


「この、害エルフどもめ! 今すぐ帰せ!」


 理由も何も一切聞かずに、俺はすぐさま非難声明を出す。

 家に泊めてやった仕打ちがこれでは、たまったものではない。

 今の俺に貸しこそあれ、落ち度なんてまったくないので遠慮など一切しない。


「まぁまぁ、そう言わずに、話しくらいは聞いてやろうや」


 俺の非難声明に対して、なだめるように割って入ってきたのは斉藤であった。


「なぜ、おまえがここにいる?」


 俺の質問に対して、余裕そうな雰囲気を醸し出そうとはしているが、奥歯をがちがちと鳴らしながら震えている斉藤が答える。


「お、お、俺は目の前にあったお尻がどうしても気になっただけだ」


 ようするに、シリンの尻を触ったら一緒についてきてしまったということなのだろう。

 とりあえず、シリンの尻のことはどうでもいいとして、この状況をあっさりと受け入れてしまった斉藤のほうに俺は驚いている。

 ただ、だからと言って俺が今の状況に少しでも興味を持ったということではない。

 むしろ、極力関わり合いたくないという気持ちが強まっただけである。

 とは言ってみても、無関係でいられなくなってしまったことも事実である。

 特に、俺らの周囲で複数の気がこちらに向けられている状況ではなおさらそうだろう。

 この分だと、非常に近い将来襲撃を受けることは間違いなさそうだ。

 美人ではあるが、迷惑極まりないハイエルフとハーフエルフに状況の確認をしておく必要はあるだろう。

 まったくもって、理不尽な話しではあるが。


「それで、一体この状況はなんなんだ? 説明してくれ」


 俺の言葉に安心したのか、背後から抱きついてきていたルーファがようやく俺を開放する。そのついでに俺は、正面から抱きついてきていたシリンもひっぺがした。

 まだ視界には入っていないが、針葉樹林の向こう側から妙な気を持った何かがジリジリと近づいてきていることもある。

 ルーファとシリンのことなんざどうでもいいが、斉藤に危害が及ぶようなことはさけたいので、行動の自由を確保しておいたのだ。


「説明する前に、これを見てください」


 ルーファが言うので、俺はわざわざ振り向いてやった。

 すると、この寒空の中、ルーファは胸元を大きく開いている。

 けっこうしっかりとした谷間がはっきりと見えたので、俺は遠慮なく見てやった。

 もちろん、性的な意味でだ。


「で?」


 俺が谷間を凝視したまま一言発すると、


「私の魅力に夢中になるのはしかたないのですが、問題なのはそちらではなくもう少し上の方です」


 いちいち癇に障る女だと思いながらも、視線を谷間から少し上の方へとずらしてやる。

 すぐにはわからなかったのだが、よくよく見ると青白い魔法陣のような物が存在しているようであった。

 だが、俺に分かるのはそこまでで、一体それがなんであるのかまでは判断できない。

 なにしろ俺は、文明社会に暮らす現代人なのだから当然である。


「これがどうした?」


 極力期待に沿う形で聞いてやると。


「異界通行陣紋です。私が触れた人間は、自動的にこの世界に送り込まれるようになっています。この世界の誰かが、召喚士である私をゲートとして利用しようとしているようです」


 正直、たいした話しではなかった。

 っていうか、そもそも本来ならば俺にはまったく関係のない話しである。

 ところがそうも言っていられなくなった現状がある。


「なぁ、なんて言ってんのこの美人のおねいさん?」


 いられなくなった現状の元が通訳を求めてきた。

 今回はしかたないとしても、いちいち面倒なのでルーファとシリンには早いところ日本語を覚えてもらうか元の世界に帰ってもらう必要があるだろう。


「拉致実行犯に仕立てられたこの女が、首謀者に会いに来るために俺らを巻きこんだとかそんな話しだ」


 俺は斉藤に対して、事実だけを端的に伝えてやる。


「はぁ? 何言ってんのよ、あたしらだって好きで……」


 シリンは俺の説明に対して不満があったらしく、何か言いかけるが……。

 俺はシリンの腕を引っ張りながら、体を入れ替えると同時に蹴りを放つ。

 まるで測ったように、俺の右足の甲の辺りに牙をむき出しにした獣の頭がヒットする。

 そいつは頭を中心にクルクルと回転しながら左の方にすっ飛んでいった。


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