第06話 異世界ウォーズ 前編 - 06 - 王女交渉
第06話 異世界ウォーズ 前編 - 06 - 王女交渉
「そういえば、考えてなかったですな。で、王女殿下におかれましては、どうすればよいとお考えです?」
そらっとぼけて、話しをレヴン王女に向ける。
すると。
「わたくしに任せてもらえませんか?」
レヴン王女は食い気味に申し込んできた。
「ほう?」
俺は、あえてはっきりとした返答はせずに、レヴン王女に話を続けさせる。
「このままなら、彼女の命はないはず。わたくしがかならずや良きように取り計らってみせます」
なぜか自信に満ちた声と態度でレヴン王女が言い切った。
「それでは、レヴン王女の身に危険が及びますがかまわないと?」
心にもない、という言葉を具現化した言葉を俺が口にすると。
「見くびってもらっては困ります。こう見えても魔界の王の娘、いざというときの覚悟はできております」
きっぱりと言い放つ。
やれやれ、である。覚悟を決めるのは勝手だがそれに付き合わされる方としてはたまったものではない。
とは言っても、形式上は俺にとって直属の上司である。あまり無下にすると軍の規律が乱れる原因になりかねない。ただでさえ、魔王軍というものは軍規がゆるゆるになる傾向が強いのだ、この程度のことで余計なリスクを犯す必要はないだろう。
ただし、一つ釘を刺しておくことにする。
「いいでしょう、お任せしましょう。その代わり、状況によっては私が直接手を下すことになるやも知れませんので、そのことはご承知いただきたい」
俺の言葉に反応して、レヴン王女は睨みつけてきたが何も言わなかった。
勇者というのは厄介な存在であるが、それは魔王軍にとっての話しであり俺にとっては路傍の石と変わらない。躓く原因にはなるので気に留める程度の注意は必要かも知れないが。まぁ、その程度である。
これ以上、このことに手を取られているわけにもいかないので、俺はこの場はレヴン王女にすべて任せることにする。
どうせ今やっている事自体が壮大なる尻拭いなのだ。少しばかり手間が増えたところで大差はあるまい。
俺は大人な対応をみせつつ、再び指揮所に戻る。敵軍の切り札が落ちたのだ、ここで一気に敵陣を切り崩す。
俺は、次々に新たな指令をだしていく。
勇者の侵攻によってそれなりの被害はあったが、想定内というよりは俺の仕掛けた罠であったので、魔王軍内に混乱は見られない。すぐに陣形を整えると、勇者の侵攻に釣られて前に突出してきていた敵を包囲する。
すると、敵軍はそこに戦力を送り込んできたので、俺は兵を引くことで伸びた敵陣の側面に遊兵部隊をぶつけた。