第05話Puls 異能者達のディスコード18 - 帰結
第05話Puls 異能者達のディスコード18 - 帰結
「すまんな。もう一度言ってくれ」
俺はもう一度話してくれるように頼む。
ここが肝心なのだ。
なにしろ、これのために来たのだから。
「もう、帰れません」
今度ははっきりと言った。
俺としては、聞き間違いであって欲しかったのだが。
「帰れない……と言ったのか? なぜ?」
思わず絶句しそうになったが、それでも俺はどうにか立て直し、理由を確認する。
「先ほど破壊された召喚ゲート以外に帰る方法は存在していません。自分には召喚ゲートを開くための手段がなく、よってザイルブルケンに帰国することは不可能であります」
なにか吹っ切れたような清々しさで、ノラははっきりと答えた。
俺の方は一転して、暗雲が立ち込めてきた。
この先の展開は、どうやら最近お決まりのパターンになりそうだったからだ。
「こっちの世界に、つてはあるのか?」
ダメ元で一応確認してみる。
「いいえ。そもそも、この世界に来る時にはここだけで、外に出たことはありません。自分にとってここは、単なる実験場でありましたから」
しょせんダメ元だった。
これで、お決まりのパターンになることが確定したことになる。
これはもう、遺憾の意を表明する他ないだろう。
「……わかった。帰還する目処が立つまで、俺の家に来るといい。泊めてやる」
俺はとても言いづらいセリフを口にした。
こんな危険物を野放しにはできないし、かと言って常に監視するような時間など俺にはない。
そんなことをするくらいなら、あのまま放置しておいた方がマシだった。
それに、今更害獣が一匹増えたところで大差あるまい。
ただし、こいつが俺の誘いを断って、一人この世界で生きていくと決めたなら話しは別である。
俺は喜んで、アマゾンのジャングルの中にでも放り出してやるつもりだった。
「……お世話にならせていただきます」
遠慮がちに、まったく遠慮をしない答えを返してきた。
とても残念である。
「今から飛ぶから、しっかり捕まっておけ」
俺は、ノラをお姫様だっこすると、来るときに開けた穴を通って、そのまま自宅へと帰還した。
<第05話Puls 了>
次回は異世界間戦争になる予定です。
連載開始時期はいつになるか未定ですが、長めの連載を想定しています。
よろしければ、お付き合いください。
よろしくお願いします。