第05話Puls 異能者達のディスコード16 - 実験場
第05話Puls 異能者達のディスコード16 - 実験場
俺が想像するに、おそらくこの日本ではないはずだ。
わざわざ進行対象となる現地で、実験などやるなどとは、いくらなんでも呑気すぎる。
「ファーベル皇国であります。かの世界には魔力が存在しておらず、それだけでなく魔法禁忌封呪が施されており魔力ゲートを開いただけで爆発を引き起こしてしまいます。なので、このままでは、共和国軍が誇る魔法師団は敵世界内ではまったく無力な存在となります。なので、魔法に変わる新たな武器が必要なのです」
さらに長々とノラが説明してくれるが、正直俺には前提となる基礎知識がまったく欠けており、完全に理解することは不可能だ。
ただまぁ、要点をまとめれば、俺がはからずも巻き込まれることになってしまったことの成り行きは概ね理解できたと見ていいだろう。
そして、解決方法はしごく簡単だ。
こいつに、二度とここに来ないことを確約させればいい。
「ノラ・ラベッツ少佐。見ての通り、君の実験は頓挫した。それに、そもそもこの計画には最初から無理があったんじゃないのか?」
俺は理詰めでいくことにする。
個人でやっていたならともかく、軍が関与しているとなると感情では動かない。
逆に理があれば動くということでもある。
「くっ……。そんなことは……」
否定しようとしても、苦しそうな表情を見れば図星であることはもろバレである。
もちろん、俺はきちんと理を説いて説明するつもりである。
「この実験は敵の異世界侵攻のための計画に使われる予定だったと君は言った。だとすれば、軍人としての部隊統制は必須。なのに、わずか千人あまりしかいないこの数でさえ、まともに統制はとれていない。こんな有様では部隊投入などできるはずがない。ましてや、戦局全体に影響を与えることができるだけの戦力にできる見込みはない」
はっきりと、言い切ってやった。
俺は前の宇宙の闘いで、戦争介入を何度もやっている。
その時の経験からの判断だ。詳しい情報は知らないが、概ね間違ってはいないだろう。
「……」
ノラは悔しそうにうつむいたが、何も言葉がでてこなかった。
俺は、さらに理を詰めていく。