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1:リュウネン

日本は久々の快晴だ。

魔王みたいな大天使様が現世に降臨してからと言うもの、地球は雲に覆われてしまい、晴れる日は少なかった。晴れる日は十中八九、大天使様が死んだことを意味する。

つまり、大天使エラリヲ・ラックステングは死に、現世より消失したのだ。


喜ばしいことだね。ああ、全く喜ばしい


子供も大人もお年寄りも、はたまた、そのペットである犬や猫も、みんないつもより老けこんだ顔でそう思っていることだろう。

大天使は死んだのではない。殺されたんだろうなー。

たぶん、勇者気取りの賞金稼ぎに。



俺は兒野渡。勇者でもなければ、魔王なんかでもないごく一般的な家庭に生まれた普通の男子高校生だ。

”普通の”とつければ最近の高校生は普通ではなくなるが、俺は至って普通だ。

勉強は中の下。スポーツ馬鹿とまではいかないが、運動音痴でもない。50m走は8秒4。握力は両手合わせて70もいかない程度。彼女も出来た試しがない。

一応、告白したことはあるよ。でもあっさり振られた。

「ごめん、兒野君をそういうので見たことないんだー」

「はっ、あんた私のこと好きなの。うっけるー」

「すみません。付き合えません、ごめんなさい」

・・・三戦三敗。今はもう過去の良い経験だと自負しているので左程辛い気持にはならない。だけど、涙は自然と出てくる。本気で好きだったから。


この話はやめにしよう。自分が酷く虚しくなる。

普通じゃないのは告白した回数が人より少しばかり多いだけ。

ただそれだけだ。




「前大天使、フォーゼン・ラックステングは言いました。

現代は西暦世紀という枠組みには当てはまらない時間軸の中で停滞している。時間は動いているように見えても、それはただの目安。自分がどれだけ生きれるかを図るために用いられる一種のツールだと。もし時間という概念が消えたとき、人は生きることを真に考えることでしょう。

と、これが前大天使様の法典であります。

大天使様がこの日本に降臨されてからというもの、あらゆる環境問題は解決し、政治は一手に大天使様の傘下で有らされる教団『天ノアマノコロモ』が引き受け、今現在まで安全で安定した日々が送られております」

クラス担任、蒼石和樹先生が自科目の現代社会研究の授業を取り行う真っ最中であった。今日は先で述べたように久々の快晴。お墓参りに行くには良き日と言える。

午後3時49分21秒。残り10分39秒で授業終了のベルが鳴り、クラスメイト達は下校するが、俺はお墓参りに行こうと思う。

両親共に健在だが、昔可愛がってもらった祖父母達への挨拶だ。

「今世紀も平和に生きれますように」とね。


「ええ、そうですね兒野君。全く私も同意見です。では、そんな兒野君に質問です。大天使様が死去された際、どういったことが起きるか。またその後の世界への影響はどうなるのかを答えてください。制限時間は20秒です。答えられない場合は・・」


にっこりとほほ笑む蒼石先生。

「タ・イ・ガ・クです♡」


発言は責任を持たねばらない。時間がないので口早に答えた。

「えー、大天使が死んだらですねー。そのー、また新しい大天使が代等しまして・・。殺した賞金稼ぎの一名が税金でのうのうと生活できる格差社会への一歩を辿ることになる・・・かなーって」

「で?」

「で?・・えーと、他には代行した大天使は誰か一人と結婚しなければならない・・・だっけ?あっでしたっけ?」

首を傾げながら苦笑して、蒼石先生に話を振る。

先生はにっこりほほ笑んでくれたが、笑顔の方が怖い!

「はい、兒野君。兒野渡君・・」




物凄く間を置いてから、先生は口を開く。



「リュ・ウ・ネ・ンです♡」


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