静かに眠る君とそれでも動き続けるこの星。
変わらない町並み、変わっていく面影。
今日も、いつもみたいに学校が終わってから、病院に顔を出す。
「こんなことがあったよ」「今度一緒にあんなことをしようね」―――――そんなようなことを、返事ができなくなるほど弱ってしまった君に、まだ生きていてもらえるように、 元気でいてもらうように、僕は今日も変わらず病院へと向かう。
けれども、君の病室の前にはやたら暗い雰囲気が漂っていた。
僕は咄嗟に思った。 「もしや、」っと想像したくもない出来事を―――――。
そして、その予感は当たってしまった。
「ついにこの日が来てしまったか・・・」
僕には、そう思うことしかできなかった。
そして、僕は涙することさえできなかった。
本当は、心の底から泣きたいはずなのに、なんでか涙が出なかった。
「悲しいのは、泣きたいのは僕だけじゃない」「それ以上に、悔しいのは君のお母さんだ」って思うと、なんだかやるせなくって。なんだか、胸がぐっと締め付けられて。
だけど、残念ながら、 いや、残念ながらというのは失礼な話ではあるが、実際 この世の中にはそんな風に、君みたいに若くして亡くなってしまう命がたくさん存在している。 言うなれば、“理不尽な死”というやつだろうか。
それが、僕らの生きる世の中だと、君に出逢う前から僕は知っていた。 知っていたはずなんだ。
だけど、君に出逢って、 君が死んでしまって、僕は痛感した。 本当に大切なことに、僕は気が付いた。
それは、命の重みだとか、そんなものじゃない。
僕が感じたのは、「「人を愛する大切さ」」というやつだ。
なぜ、僕がそれを大切に感じたのか。
それは、言ってしまえば簡単なことだと思う。
人の寿命は、生まれた時にすでに決まっているかもしれない。
いや、もしかしたら、全く以て決まっていないかもしれないし、
でも、どちらにしろ、僕らにそれを知る術はないのだろうと思うんだ。
けれど、僕らが自分の人生において、自分にとって大切な人のことを心の底から想って、その人のことを“幸せに死なせる”ことができたら、その人にとっては早死だとか、そんな寿命の長さは関係ないんじゃないのかと思って。
僕からしてみれば、人生は長さじゃなくて、重さだと思うから。 その人が、満足できたかどうかだと思うから。
だから、僕は僕が死んだら君をあの世で絶対に探し出す。
そして、訊いてやるんだ。 「君の人生は幸せでしたか?」と―――――
変えられる生き方、変えられない――それが人生。