君が隣にいないだけで、こんなにも人生は。
僕は君に、何度も繰り返し「ありがとう」と言う。
僕が退院してから、一週間。
君の体調が悪化して、三日が経った。
君は、もはや一人で起き上がることも、自由に話すことも、ままならない。
食事も、着替えさえも、全て僕や君のお母さんの手を借りなければできなくなってしまった。
しかし、君が僕らの手を借りて過ごせるうちは、君が僕らの手を借りてでも「生きていたい」って思ってくれているうちは、僕は笑って君に話しかけることにしようと思う。
それが、例え 傍から見たら、君からの返事がない独り言に聞こえてしまったとしても、内容のない戯言だと思われてしまったとしても、僕は君に話しかけ続けようと思う。 君が聞いていてくれていると思って。
だって、僕は君が好きだから。
病気になっている君でも好きだから。
そりゃあ、本音を言えば、病院でではなく、学校で出逢いたかった。
君みたいな可愛い子だったら、僕はすぐさま探し当てただろう。
「人生を共に歩むべき相手」だという風に、気付いて君に告白しただろう。
まぁ、僕は臆病だから、本当に告白できたかどうかはわからないけれども。
だけど、多分きっと、そんな僕でも、素直に君を「好きだ」って思うことはできただろう。
だって、実際、今は何よりも君のことを愛しているから。
君のことを好きになってよかったって心から思っているから。
だから、僕は「死ぬ姿を見せたくない」って泣きながら言った君を、日に日に弱弱しく疲れ果てていく君を、 辛いけれども君の隣にいて、見送ろうと思っている。
だから、安心して。 もう、僕は覚悟しているよ。
でも、だからって、君に早く死んでほしいわけじゃない。
もちろん、長生きしてほしいし、できることならば・・・・・。
でも、それが叶わないというのなら、せめて僕に見送らせてはくれないだろうか?
僕は、君と一緒に笑って学校に通いたかった。
僕は、もっとずっと君と話していたかった。
ずっと、ずっと、ずっと、一緒にいたかった。
さようなら、僕の愛した君よ。 できることなら、また―――――
僕は君に、「さよなら」を言う練習を繰り返す。