僕にとって君は。君にとって僕は。お互いに。
僕は強い人間じゃないから、できることなら強くなりたい。
でも、それ以上に、絶対に弱くなんかなりたくない。一人の男として。
ある日の朝、僕は退院をした。
よって、これからは もうずっと一緒にいられるってわけじゃない。
僕は高校生であるから、義務教育ではないにしろ、卒業しなくてはいけないから。
だから、僕は病院を出る前に君に言ったんだ。
「またちゃんと会いにくるから、待っていてくれ」って。
なぜ、僕がわざわざそんなことを君に言ったのかというと、いわゆる“もう君は長くないから”。
本当は大好きな君にそんなことなんか言いたくないし、君にできることならば僕より長生きして欲しい。
けれど、医者が「あなたの余命は残り半年です」って君に宣告してから、もう10ヶ月ほど経ってしまっている。
そう・・・僕らには、残された時間がないんだ。
本当は、学校なんか行かずに君の隣にずっといたい。
けれど、僕の親は君の存在を知らない。
それに、学校は「これ以上、欠席が続けば留年決定」って言う。
そんな僕は一体、どうすればいいんだ? 君の隣にいることはできないのか?
僕は一生懸命考えた。 病院にいる時、退院した後のことを何回も考えていた。
そして、出した結論。 学校が終わってから、部活なんか行かずにここに来る。
それが、僕の出した結論だ。 できる限り、君と一緒にいられる、僕なりの答えだ。
だから、僕は安心して学校に向かう。
学校が終われば、また君のところに行って、話をすればいいからだ。
そのためにも、僕は学校に向かった。 君に「こんなことがあった」って話をするために。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
本当なら、君も僕と同じ高校に通っていたはずなのに。
運命というものは本当に残酷で、君は僕よりも一つ下の学年で、そんな君の入学が決まった頃、君の体調は悪化して、君は学校ではなく病院に入ることになってしまった。
だけど、学校の方には すでに入学金とかはもう払ってしまっていたし、それに最初は治る病気だと思っていたものだから、入学式には出れなかったけれど、君の席だけは学校にあった。
しかし、僕はそんな大事なことも知らずに、二年の一学期実力テストを「だりぃ~」って呆けて過ごし、結局 赤点にならないギリギリの点数を取って、「セーフ!!」とか言って喜んでいた。
そのテスト返しの最中に、君の病気は治らないと,余命半年と医者に宣告されたことによって、君の席が学校からなくなっていることとも知らずに。
―――それからしばらくして、僕は入院をした。
確か、夏休みの中盤頃だったか。 部活で骨折をして、入院することになった。
しかし、そんな入院生活は、僕にとって暇で暇で仕方がなかった。 退屈の極みだった。
だから、僕はその退屈凌ぎのために、廊下を歩きまわった。
どこに何があるか、誰と誰がどんなつまらない会話をしているのか。
そんなことを適当に考えながら、廊下を突き進んでいった。
すると、院内を一周し終え、自分の部屋に戻ろうとしたところで、僕の個室の扉の前にある窓から外を眺めてる女の子を見つけた。
僕は、その子を見て、自分と同い年くらいじゃないかと思った。
それと同時に、『とても可愛い子だ』とも思った。 僕は君に一目惚れをしたのだ。
だから、僕は少ない勇気を振り絞って、君に直接 訊いてみた。
「君もここで入院してるの? どんな病気で入院しているの?」って馬鹿なことを。
君に何度謝れば、僕の気は治まるのだろうか。
君に何度伝えれば、この思いは届くのだろうか。