君は決して一人で生きているわけじゃない。
死ぬ覚悟があったとしても、死を恐れない人間などいない。
死とは、この世からの離別。大切な人との別れのことだから。
でも、それからも、僕は自分の病室に帰ってからも、君のことだけを考えていた。
ついさっき廊下で出逢い、それで少し話しただけの関係だけれども、僕にとっては それだけでも君の存在は掛け替えのない存在になっていたから。
だから、僕は何度も何度も隣の部屋にいる君のことを想った。
もはや、眠りにつくことさえままならない。 ・・・そんな日が、三日続いた。
そして、僕は『やっぱり納得できない』と思い、君の部屋を訪れることになる。
すると、君は寝込んでいた。 話を聞くと、体調を崩してしまったらしい。
悲しい。寂しい。君と話したい。君の笑顔を見たい。 心から、そう思った。
そして、それと同時に『君のことが本当に好きなんだ』と、心から確信をした。
だから、僕は そこにいた君のお母さんに挨拶をする。
「こんな僕でよかったら、少しだけでも娘さんと一緒に過ごす時間をください」って。
すると、君のお母さんは「娘とはどこで知り合ったの?」って僕に訊いた。
でも、それは当然のことであると思う。
どこの輩ともわからない奴が、突然そんなことを言うのだから。
だから、僕は君と話した日のことを、 簡単にだが君のお母さんに説明をした。
すると、君のお母さんは言った。 「娘がそう望むのなら」っと。
それを聞いて、やっぱり君のお母さんも、君に似て優しい人なんだと思った。
いや、君がお母さんに似て、優しい人に育ったのだろう。 僕はそう思った。
それから、数時間して、君はうっすらと目を開ける。
その時、病室には僕と君のお母さんがいた。 ・・・二人とも君を見て笑った。
もう、君が病気のことを一人で背負い込む必要はない。
なぜなら、君には僕らがいるから。
君には、君のことを大切だと思っている人間がちゃんといるから。
すると、その光景を見た君は、微かに涙した。 一粒だが確かに君は、涙した。
誰かを守りたいなら、口先だけじゃなく、行動で示してみろ。
それができないようなら、その相手は別にどうでもいい人間。