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私とヒロインの反面世界

作者: 琴原 鈴音




ーーー大丈夫?無理してない?---




そうやって何度私は、彼の背中に手を回してさすってあげただろう?




ーーー安心して、ちゃんと好きになれるからーーー




そうやって何度私は、自分に嘘をついたのだろう・・・?





                     ◇◆◇◆◇




私は悪女。世間ではそう呼ばれる役柄だ。


女優ではない。それが私の役なのだ。


私たちは、紙に描かれて初めて生をうける。


人生なんてあってないようなもので、結局は描いた人の思うように物語は進まれていく。



だから私は、悪女として生きなければならない。


それが運命。宿命。ルール・・・



私は、ヒロインの女の子のライバルという存在だった。


名前はあるが好かれない存在。

ヒロインをイジメて、ヒロインの将来彼氏になるであろう存在に優しく、好かれるよう頑張った。



それでも、ヒロインとヒーローはくっつくはずだった・・・・のに



「俺は、お前の方が好きなんだ!」



どこで運命を変えてしまった。

こんな場面は、本に載らない。こんなものは載せられるはずがない。


同時刻としてはヒロインが友達の家で悩んでいる姿が描かれている。その裏の本当の告白



『ごめんなさい。・・・でも分かってくれるでしょ?私はあなたに片思いをしていい存在だけど、両思いになってはいけない物語なんだ』



そういって立ち去ろうとした。

嬉しかった。片思いで終わるはずだったのに向こうも好きだと言ってくれたことが。


しかしそれは私の役じゃない。私は悪女。

作者がそう設定して、動かして最後は、ヒロインに譲らなくちゃいけない存在。


裏の告白を無かったことにした。




・・・それでも、私を追いかけて来てくれて、「大切な存在なんだ。」と後ろから抱きしめた彼の腕を振り取ることができなくて・・・私は・・・



ーーーずるい女。これで私は役でも役以外でも悪女になってしまった。



                     


                     ◇◆◇◆◇




こうして私たちは付き合い始めた。


もちろん物語を壊さないように、

今まで通り私は悪女を演じ、彼はヒロインを好きになっていくフリをした。


ヒロインにも気づかれた。私たちが特別な存在になったことに。

そして、焦った。


ヒロインも彼のことが好きで、そして彼はヒロインとの将来が約束された人だったのに

たとえ物語では、くっついたとしても表面だけの未来を想像し恐怖した。


だからヒロインは描かれない所で、私を逆にイジメ、彼に媚を売った。


しかし、ヒロインという立場に居る彼女は、描かれている時間が多く、

彼と私、両方描かれていない時は、場面に描かれない裏で、お互いを確かめ合った。




「やっぱり、あなたには敵わないわ。だって彼はあなたのことを本気で愛してると分かったから・・・。大丈夫。これからは2人のことを応援するわ。」


ーーー嘘。本当は私を愛している。


舞台は交差点。

出演は私とヒロイン。


ふきだしに入れられた言葉を読み、さも諦めたような演技をした。


「・・・ありがとう。」


ーーー嘘。描かれていないところで憎悪の瞳で睨みつける。



「それじゃあ私は、言うことも言ったし帰らせてもらうわ。彼が来ちゃうしね?」


「っ待って!」


「?」


「・・・私たち、これからは友達として過ごしていきたいの・・・。だめ・・・かな?」


「!ううん!嬉しい!嬉しいわ!・・・じゃあこれからは友達としてよろしくね」


「うん。バイバイ!また明日ね!」


裏で行われていたことなど知らない作者は、できる限りハッピーに終わらせようとしたのかもしれない。

否。


これは最後の演出だった。良い人で終わらせるための。


ヒロインが後ろに向いた。瞬間、



ブレーキをきる音と、ガシャンッ!!!という文字が紙に刻まれた。


振り返ったヒロインが目の前で起きた交通事故に驚き、血だまりの中心人物を見つけて駆け寄る。


セリフを叫んだ。


「いやぁぁあああっ!なんで・・・なんでこんなことに・・・せっかく・・・友達になろうって言ったばかりなのに!!」



泣き崩れる様子を虚ろとした瞳で見つめる。

視界がぼやけてきて、病院に運ばれても助からないこと感じ取った。




でもね・・・でもねヒロインさん。私には見えるんだよ。

















ーーーーーーーあなたが手で覆った顔がとても良い笑顔だってことが。

















きっと作者は気づいていたのかもしれない。


自分の描いた子達が勝手に暴走し始めていたのを・・・

だから修正しようとして死んでも物語の一幕として終わる私が、選ばれた。



ああっ・・・最後に見える顔がこの女じゃなくて、彼だった良かったのに・・・


そう途切れる意識の中で考える私は本当に悪女だったのかもね。






最初の会話文は、彼がヒロインの事を好きになる演技ができないと悩んでいるときの回想です。

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