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死んだ親父の部屋は1日で1年進む 〜45歳サラリーマン、人生をやり直す〜  作者: ズッキー


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20/20

第20話 本番、すべてはこの一日のために

「……今日か」


朝、いつもより少し早く目が覚めた。


カーテンの隙間から入る光は、いつもと同じはずなのに、どこか違って見える。


今日は試験日だ。


ファイナンシャルプランナー3級。

CBT方式。予約したあの日から、現実では数日しか経っていない。


だが――


「一年、やったからな」


小さくつぶやく。


部屋の中で積み上げた時間。

問題を解き、間違え、理解し、説明し続けた日々。


それが、今日試される。


「……行くか」


軽く伸びをして、家を出る。


試験会場までは電車で二駅。

見慣れた景色のはずなのに、妙に鮮明に見える。


頭の中で、知識が静かに整理されている。


税金。保険。投資。契約。


「……大丈夫だな」


確認するように呟く。


不思議と不安は少ない。


緊張はある。だが、それは嫌なものじゃない。


「準備してきたからな」


それだけだ。


会場に着く。


ビルの一室。

受付を済ませ、ロッカーに荷物を入れる。


周りには何人か受験者がいる。


若い学生。スーツ姿の社会人。

それぞれが静かに座っている。


「……みんな、本気だな」


当たり前のことを、改めて思う。


ここは“結果が出る場所”だ。


席に案内される。


パソコンの前に座ると、一気に現実味が増す。


「……ここで終わりか、始まりか」


小さく笑う。


画面に試験開始の表示が出る。


スタッフの合図。


――開始。


問題が表示される。


最初の一問。


「……簡単だな」


即座に選択肢を切る。


次。


「これもか」


次。


「パターンだな」


手が止まらない。


問題の意図が分かる。

引っかけも見える。


「……なるほどな」


自然とペースが上がる。


だが、油断はしない。


一問ずつ確認する。


「ここ、計算か」


慎重に解く。


数字を追う。ミスがないか見る。


「……よし」


時間は十分にある。


だが、焦らない。


「全部取る」


静かに決める。


中盤。


少しひねった問題が出る。


「……来たな」


だが、止まらない。


知識を組み合わせる。


税金と保険。投資とリスク。


「こういうことか」


解ける。


ちゃんと理解しているから。


終盤。


見直し。


一問一問、丁寧に確認する。


「……大丈夫だな」


最後のクリック。


終了。


画面が切り替わる。


結果表示。


ほんの数秒のはずなのに、やけに長く感じる。


「……」


呼吸が少しだけ浅くなる。


だが、目は逸らさない。


表示される。


――合格。


「……はは」


思わず笑う。


声が漏れるのを抑える。


「……通用したな」


小さくつぶやく。


部屋でやってきたこと。


積み上げた一年。


それが、現実で証明された。


「……悪くねぇ」


立ち上がる。


足取りが軽い。


会場を出る。


外の空気が、やけに澄んで感じる。


ただの資格かもしれない。


だが、違う。


「これは、“使える力”だ」


静かに言う。


金の流れ。契約の構造。

人がどうやって搾取されるのか。


全部、見える。


そのとき、スマホが震える。


田村からのメッセージだった。


『今日、軽く飲まね?』


少しだけ考える。


「……いいタイミングだな」


口元が上がる。


「行くか」


返信する。


『いいよ』


ポケットにスマホを戻す。


何も知らなければ、ただの飲み会。


だが――


「……面白くなりそうだな」


小さくつぶやく。


このときはまだ知らなかった。


この何気ない誘いが――


次の“事件”に繋がることを。


---


【取得スキル】

・日商簿記3級

・FP3級


【習得スキル】

・日商簿記2級(理解度:92%)

・契約法基礎(理解度:28%)

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