表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死んだ親父の部屋は1日で1年進む 〜45歳サラリーマン、人生をやり直す〜  作者: ズッキー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/20

第2話 一年後の俺

目を覚ましたとき、天井が見えた。


見慣れた天井だ。

親父の部屋の天井。


「……あれ?」


体を起こす。

俺は床に寝転んでいた。


どうやら、そのまま眠ってしまったらしい。


「……寝落ちか」


立ち上がろうとして、違和感に気づいた。


体が軽い。

妙に軽い。


肩を回す。

首を回す。

背筋を伸ばす。


「……なんだこれ」


体が、信じられないくらい動く。

まるで長年の疲れが全部消えたみたいだ。

それだけじゃない。


頭の中も妙にクリアだった。

昨日までのモヤモヤが、嘘みたいに消えている。


俺は部屋の中を見回した。

何も変わっていない。


机。

本棚。

カレンダー。

そして――

机の上のメモ帳。


俺はゆっくり近づく。

そこには、昨日見た文字がそのまま残っていた。


――この部屋は、一日で一年くれる。


「……そんなわけないだろ」


苦笑する。

だが、そのとき。

机の横に置かれていた鏡に、ふと自分の姿が映った。


「……え?」


俺は鏡の前に立った。


顔は、俺だ。

間違いなく俺だ。


だが――

体が違う。


腹。

胸。

腕。


明らかに、筋肉がついている。

中年のだらけた体じゃない。


鍛えた体だ。


「……なんだよこれ」


思わずシャツをめくる。

腹筋が割れている。


しかも、うっすらじゃない。

はっきりと形が分かる。


俺は昨日まで、腹が出た中年だったはずだ。


それが今は――

明らかに一年くらいトレーニングした体になっている。


「……は?」


意味が分からない。


夢か?

いや、夢じゃない。


頬をつねる。

痛い。


俺はゆっくりと部屋のドアを開けた。

階段を降りる。

リビングに出る。


実家の様子は何も変わっていない。

窓の外を見る。


朝だ。

昨日と同じ朝。 


スマホを取り出す。

日付を見る。


「……昨日?」

昨日の日付のままだ。


つまり――

外では、一日も経っていない。

だが、俺の体は違う。


俺はゆっくりとつぶやいた。


「……まさか」


机のメモが頭に浮かぶ。


――この部屋は、一日で一年くれる。


背筋にぞくりとしたものが走った。

そんな馬鹿なことがあるわけがない。


だが、もし――

もし本当に。

この部屋が一年くれるとしたら。


俺は静かに拳を握った。


「……人生、やり直せるのか?」


努力できなかった45年。


だが、もし一年があるなら。

一年あれば、人は変われる。


いや――

一年が何度もあるなら。


俺はゆっくり振り返った。


階段の上。

親父の部屋のドアが、静かに閉まっている。


まるで、

「もう一度入ってみろ」

と言っているみたいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ