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死んだ親父の部屋は1日で1年進む 〜45歳サラリーマン、人生をやり直す〜  作者: ズッキー


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18/20

第18話 その契約、違法です

「……もう一回、全部洗うか」


部屋に入った瞬間、迷いはなかった。


現実では一日。だがここでは一年ある。


なら――やることは決まっている。


机の上に資料を並べる。


帳票、仕入れデータ、廃棄記録。

そして、新しく増えた本の山。


契約。下請法。独占禁止法。


「……多いな」


思わず苦笑する。


だが、不思議と嫌じゃなかった。


むしろ――ワクワクしている。


「全部繋がる気がするんだよな」


ページをめくる。


最初は意味が分からない。

条文は硬く、言い回しも独特だ。


だが、やることは変わらない。


分解する。


「契約とは何か」


書き出す。


当事者の合意。

権利と義務。

履行と違反。


一つずつ言葉にする。


「……なるほどな」


少しずつ、見えてくる。


数字の“裏側”にあるルール。


なぜこの条件になるのか。

なぜこの取引が成立するのか。


「……ここか」


手が止まる。


リベート。


販促費。


その扱い。


「これ、グレーじゃないな」


ページをめくる。


「条件付きリベート」「優越的地位の濫用」


その言葉が、頭の中で現実と結びつく。


「……黒だな」


静かにつぶやく。


今回のケース。


特定の商品を大量に仕入れさせる。

売れなくても問題ないように、リベートで補填する。


一見すると、店にとっても悪くない条件。


だが――


「選択の自由がない」


仕入れなければ、不利な条件になる。

他の商品では同じ条件が出ない。


つまり、実質的に“強制”されている。


「……アウトだろ、これ」


背もたれに体を預ける。


さらに資料をめくる。


「……しかも、隠してるな」


帳票と照らし合わせる。


リベートが、そのまま処理されていない。

別の項目に分散され、見えにくくなっている。


「……意図的だな」


ただのミスじゃない。


「隠すための処理だ」


そこまで分かったとき、確信に変わる。


これは現場の問題じゃない。


「……本社か」


小さくつぶやく。


そして――


「これ、他の店もやってるな」


同じ商品。同じ動き。


偶然ではない。


仕組みとして回っている。


「……面白くなってきたな」


口元がわずかに上がる。


怖さはある。


だが、それ以上に――


「潰せるな」


確信があった。


一年の時間がある。


知識も、揃ってきた。


「……証拠、集めるか」


ノートを開く。


やることを書き出す。


・仕入れ条件の原本確認

・リベート契約の有無

・他店舗データとの比較

・帳票処理の流れの特定


「……全部繋げる」


一つでも欠ければ弱い。


だが、揃えば――


「終わりだ」


静かにつぶやく。


そのとき、不意に父親の顔が浮かぶ。


あの部屋を残した理由。


何も言わなかった意味。


「……こういうことかよ」


小さく笑う。


ただ強くなるためじゃない。


“使え”ということか。


「……分かったよ」


立ち上がる。


ここから先は、もう引き返せない。


だが、それでいい。


「……全部、表に出してやる」


ドアの前に立つ。


現実に戻る。


まだ一日も経っていない世界。


だが――


中身は、もう別人だ。


ドアを開ける。


その瞬間、確信していた。


これはただの売り場の問題じゃない。


もっと大きい。


そして、その中心にいる人間は――


まだ、何も気づいていない。


---


【習得スキル】

・日商簿記3級(理解度:100%)

・日商簿記2級(理解度:92%)

・契約法基礎(理解度:18%)

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