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死んだ親父の部屋は1日で1年進む 〜45歳サラリーマン、人生をやり直す〜  作者: ズッキー


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第16話 その数字、どこかおかしい

売り場の配置を変えてから、数日は明らかに手応えがあった。


売上は大きくは変わらない。だが、利益は確実に伸びている。

店長も納得し、本社からも特に口出しは入らない。


「いい感じじゃないですか」


そう言われることも増えた。


だが――


「……いや、ちょっと待て」


ある日の閉店後、帳票を見ていたときだった。


違和感が残る。


数字自体はおかしくない。むしろ整っている。

だが、“整いすぎている”。


「……なんだこれ」


ページをめくる。


同じ商品。似たような売上。似たような在庫数。

それなのに、ある特定の商品だけ、妙に動きが揃っている。


「偶然か?」


小さくつぶやく。


だが、違う気がした。


売上の波が、きれいすぎる。

在庫の減り方も、不自然なほど均一だ。


「……そんなわけないだろ」


現場を知っているから分かる。


売り場はこんなに“整わない”。

日によってブレる。天気でも変わる。客層でも動く。


それなのに――


「ズレがない」


ノートに数字を書き出す。


日別の売上。仕入れ。廃棄。

並べてみると、違和感はさらに強くなる。


「……これ、作ってるな」


ぽつりと出た言葉に、自分で少し驚く。


だが、その仮説が一番しっくりくる。


実際の動きじゃない。

“こう見せたい”動きになっている。


「……なんのために?」


考える。


売上を良く見せるためか。

在庫を少なく見せるためか。


それとも――


「別の数字、隠してるのか」


背筋が少しだけ冷える。


単なるミスならいい。

だが、意図的に触っているとしたら話は違う。


「……誰が?」


店長か。本社か。それとも――


「……」


一度、深く息を吐く。


ここで決めつけるのは早い。


証拠がない。


「……なら」


ノートを閉じる。


やることはシンプルだ。


「確認するか」


次の日。


あえて何も言わずに売り場に立つ。


問題の商品の前に立ち、動きを見る。

手に取る客。戻す客。売れるタイミング。


すべてを頭に入れる。


「……やっぱりおかしいな」


数字と合わない。


明らかにズレている。


それでも、帳票上は“綺麗な数字”が並ぶはずだ。


「……どうやってる?」


そのとき、背後から声がした。


「何見てんだ?」


振り返ると、田村が立っていた。


「いや、ちょっと気になって」


軽く答える。


「ふーん」


田村は商品を手に取る。


「これ、最近動いてるからな」


「……そうですね」


あえて否定しない。


「本社も推してるしな」


その一言に、少しだけ引っかかる。


「本社、ですか」


「おう。なんか知らんけど、やたら条件いいんだよ」


さらっと言う。


「条件?」


「リベートとか、販促費とか。細かいのは知らんけどな」


軽い調子だ。


だが、その情報は軽くない。


「……なるほど」


小さくつぶやく。


ピースが一つ、はまる。


「……もう少し見てみるか」


その日は、それ以上何も言わなかった。


確信はない。だが、違和感は確実にある。


そして何より――


「このままにするのは、気持ち悪いな」


帰り道、空を見上げながら思う。


知らなければ、そのまま流せたかもしれない。


だが今は違う。


見えてしまった。


気づいてしまった。


「……なら、やるしかないか」


小さく笑う。


数字は嘘をつかない。

だが、人間は簡単に嘘をつく。


なら――


そのズレを、全部拾えばいい。


ポケットからスマホを取り出す。


メモを開く。


調べることは決まっている。


仕入れ条件。リベート。廃棄の処理。

そして、この数字を作っている人間。


「……全部、見てやる」


静かにつぶやく。


まだ確信はない。


だが――


この違和感は、間違いなく“何か”に繋がっている。


そしてその先にあるものを、俺はまだ知らない。

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