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死んだ親父の部屋は1日で1年進む 〜45歳サラリーマン、人生をやり直す〜  作者: ズッキー


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第1話 努力できなかった男

俺は45歳の平凡なサラリーマンだ。


これまでの人生、特別な成功もなければ、大きな失敗もない。

ただ一つ、はっきりしていることがある。


俺は努力をしてこなかった。


学生の頃、先生によく言われた。


「お前はやればできるタイプだな」


その言葉を、俺はずっと都合よく信じていた。


やればできる。

本気を出せばできる。


まだ本気を出していないだけだ。


そう思い続けているうちに、気づけば45歳になっていた。


資格はない。

特技もない。

会社でも特に目立つ存在ではない。


同期は管理職になり、

後輩たちはどんどん追い抜いていく。


俺の評価はいつも同じだ。


「いい人だけど、まあ普通かな」


悪くない評価。

でも、決して良くもない。


夜、家で一人で酒を飲みながら、よく考える。


もしも――

もしも、もう一度やり直せるなら。


例えば、外では一日なのに、

中では一年くらい過ごせる場所があったらどうだろう。


一年くらいこもって、

資格を取って、

体を鍛えて、

格闘技でも習って、

本気で努力してみたい。


そうすれば、人生を逆転できるんじゃないか。

そんな、子供みたいな妄想をすることがある。


だが、もちろん現実にそんな場所があるわけがない。

あるわけがない――


そう思っていた。

父が死ぬまでは。


親父が亡くなったのは三ヶ月前だ。


葬式や手続きでバタバタして、

実家の整理はずっと後回しにしていた。

だが、そろそろやらないといけない。


俺は久しぶりに実家に来ていた。


古い木造の家。

子供の頃から何も変わっていない。


階段を上がり、

二階の奥にある部屋の前に立つ。


そこは――

親父の部屋だった。


親父とは、正直あまり仲が良くなかった。

寡黙で、頑固で、

何を考えているのか分からない人だった。


子供の頃、褒められた記憶もほとんどない。


だから俺は、

いつの間にか親父と距離を置くようになっていた。


ドアノブを回す。

ギィ、と古い音が鳴った。


部屋は意外なほど整っていた。


机。

古い本棚。

読みかけの本。

壁にかかったカレンダー。


人がいなくなっただけで、

生活の気配はそのまま残っている。


「……こんな部屋で何してたんだよ、親父」


思わずつぶやく。


ふと、机の上に古いメモ帳があるのが目に入った。

何気なく手に取る。


ページをめくる。


一番最初のページに、

たった一行だけ書かれていた。


――この部屋は、一日で一年くれる。


「……は?」


思わず声が出た。


意味が分からない。

冗談かと思った。


だが、あの親父がこんな冗談を書くとも思えない。

首をかしげながら、俺はメモ帳を机に戻した。


そのときだった。


急に、強い眠気が襲ってきた。

立っていられないほどの眠気だ。


「……なんだ……急に……」


視界がぼやける。

体の力が抜ける。


俺はそのまま、

親父の部屋の床に倒れ込んだ。


意識が沈んでいく。

最後に思ったのは、くだらないことだった。


もし本当に――

この部屋が一年くれるなら。


俺は今度こそ、

ちゃんと努力するのに。

その瞬間、意識が完全に途切れた。


そして俺はまだ知らない。


この部屋が本当に、

人生をやり直す時間をくれる場所だったことを。

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