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7.分身体、マオ




己の分身体、マオを完璧に作り上げた私は、早速彼女に命令を下した。


「マオ。私の代わりに魔界へ行き、魔王として統治しろ。争いを起こす奴には鉄拳制裁。出来る?」

「承知しました」

「おっ。優秀」

「マスターの意に反する者は速やかに処分いたします」

「ちょい待てストップ」


一瞬とても利口な分身だと思いきや、思考が極端だった。


「クロード?人造人間ホムンクルスってみんなこんな感じなの?」

「こんなもんです。中身は生まれたての赤ん坊ですから」

「あー、何となく察した」


つまり、私の考え方を一から教えていくってことね。面倒だけど、これを乗り切ればあとはかなり楽になるはず。頑張れ私。


「えっとね、マオ」

「はい、マスター」

「私は、シイユ・エスメル・ヨークシュア。魔法が大好きで人間界で平和に暮らしてるの。今は魔王も兼任してるけど、魔界へは行きたくない。ここまではオッケー?」

「把握しました。マスターは人間界での生活をご希望なのですね」

「そそ。でも魔王である以上、魔界も統治しなくちゃいけない。そこで、マオには私の代わりに魔界に滞在して、魔物達が悪さしないように見張っててほしいの」

「理解しました。マスターの代わりに魔界を治め、争いを鎮静化、もしくは未然に防ぐことを目的とします」

「めっちゃ賢くね???」


割とシンプルにまとめたつもりだったんだけど、これ完全に理解したでしょ絶対。


「知能が通常の人造人間ホムンクルスより遥かに高度なようです」

「そんなことあり得るの?」

「本来であればもっと時間をかけるものですが、魔王様の素質と魔力量が可能にさせたものと思われます」

「うわ、じゃあもうあとは勝手に覚えてくだけ?」

「そのようで」


細かく教える必要がないのは非常に助かる。出来たらすぐにでも魔界に飛んでってもらって統治してほしいくらいだから。


「…どうしよ。他に覚える必要のあるもの…?」

「ひとまずは良いのではないでしょうか。それに………もうじきメイド達が魔王様を起こしに来る頃合いです」

「え、あ!!!」


集中しすぎて忘れていた。そうだ、今は寝てる時間だった。

慌てて結界を全て解く。ギリギリだった。解いた瞬間、ドアをノックする音が聞こえ、メイドが「シイユ様、夕飯のお時間です」とドア越しに声をかけてきた。


「マオ、マオ。とりあえずベッドに入ってて」

「はい、マスター」


小声で急ぎ身支度を。寝起き感を出すため髪を少しばかり崩した。


「シイユ様?起きておられますか?」

「…今起きた〜」


ドアを少し開け、隙間から顔を覗かせる。目を擦り、「起こしてくれてありがとね」とお礼を言う。


「お目覚めですか、シイユ様」

「起きたよ〜」


シレッとクロードも合流。メイドには立ち入りを禁じたのに執事はオッケーだなんて矛盾しているので、寝ている間は屋敷の警備を命じていた(という建前)。


「ふふ、シイユ様。可愛らしい寝癖が」

「え、あ、やだぁ」


……わざとらしくないか。ていうかあざとすぎないかな。やってて自分で引いちゃうんだけど。

中身は前世の年齢+現在の年齢なので、見た目ほど幼女ではない。けど肉体が完全に幼女のそれなので、違和感がないように幼女を演じている。


メイド達は私の“幼女イメージ”に見事騙されている。いいのかそれで。



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