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6.人造人間を造ろう



おやつタイムも終わり、私はさっさと自分の部屋へ。目的はズバリ、自分の身代わりの作成である。主に用途は魔界の統治。もうどうにかして魔界に行かなくて済む方法をやりたい。それだけ。


「…理論的には可能ですが、魔界の術者でも人造人間ホムンクルスの製造はごく一部でしか成功例がありません。果たして上手くいくでしょうか」

「当たって砕けろよ。何せ私はかの魔王を倒した実績がある。魔力量には問題はないはず」

「それはそうですが…」


遊んで、食べて、あとは夕飯まで寝る。これが大体の私の日課ルーティン。今日はその寝る時間を使って自分の分身を作ろうという計画だ。メイド達には時間まで寝るから部屋には入ってこないでね、と釘を刺してある。普段の行いが良いのでメイド達も素直に言うことを聞いてくれるというわけだ。


部屋に防音結界、万が一に備えて衝撃吸収結界、あとは発光してもバレないように幻影結界。

これで部屋の前を通りがかっても中は静かなのでみんな私がいい子で寝ていると思い込む。


「さ、始めるよ。人造人間ホムンクルスの材料は高い魔力の石と、術者の血液、あと膨大な魔力」

「材料は揃っておりますね。何かありましたら即座に対処いたします」

「ありがと」


本当は魔術書とかで人体錬成の陣も作らないといけないんだけど、私の場合真横に専門家クロードがいるので全て飛ばせる。こういうとき配下に魔族がいるとすごい便利。


ナイフで指を刺し、ほんの少し血液を石に垂らす。クロードが魔法で部屋のど真ん中に錬成陣を描く。その更にど真ん中に血の付いた石を置き、魔力を流し込む。


「クロード、呪文は?」

「必要ありません。その常識は人間だけのものです」

「えっそうなの?」


魔法・魔術と言えば呪文。長ったらしい言葉を唱えるものだと思いきや、そもそも呪文自体も人間が勝手に作り出した、人間用の術式なのでそんなものは無駄の塊らしい。


知らんかった。


「魔族はその肉体に魔術が存在します。けれど人間は魔力を保持しているのみで魔術が肉体の中にはない。だから魔法陣や魔術書を経由しないと効果が発揮されないのです」

「私人間だけど?」

「貴女様は魔王を継承されました。つまり、肉体は人間でありながら肉体の中に魔術も継承されているのです」

「マジか」

「マジです」


そうこうしている間に、置いた石がコトコトと動き出した。お?

次第に血が石を包み込み艶が出て、宝石みたいに輝き出す。え、待って? その色合いすんごく見覚えがある。

えーっと、少し前に錬金術の本で見た……


「……賢者の石…?」


直後、石が浮き上がる。


「あ、浮いた…––––!?」


油断した。石がいきなり光ったのだ。真っ赤な光。

とっさに目を瞑り、光が収まったのを察してゆっくりと開ける。


「お……おお!?」

「成功、ですね」


私が立っていた。

感動だ。本当に、私のコピー、もとい私の分身が出来た。服まで完全再現。しかもかなり忠実に。何なら横に並べば双子と見間違うほどに。


「く、クロード。これ、成功?」

「間違いなく成功です。お見事です、魔王様。魔力も魔王様と遜色ありません。恐らくですが、人間界で史上初の快挙です」

「そ、そんなに」


ベタ褒めしてくれるクロード。そ、そんなに褒めるなよ(照)


「魔界でも数えるほどでしか成功例がありません。それだけ難題かつ複雑な錬成なのです」

「ほ、ぉおおお…」


奇声が上がる。感動と驚愕、色々入り混じった感情。そこまで難しいと感じなかったので、尚更実感が湧かない。

が、成功は成功だ。素直に喜ぶべきなのだろう。


「魔王様、この人造人間ホムンクルスに名をお与えください」

「名?」

「はい。今のままでは動くこともなければ喋ることもないただの人形です。名を与えることで魂が宿るのです」

「そっか…。確かに、名前がなければ呼ぶときも困るね」


んー、何て名前がいいかな。シンプルな方が呼びやすいよね。あんまり凝りすぎると私が忘れちゃうし。シンプルシンプル…。あ、良さそうなのがあった。


「…マオ。あなたは、今から“マオ”だ」


私がそう呼ぶと、“マオ”がゆっくりと瞬きした。すげぇ。ほんとに動き出した。生きてるみたい。


「……インプットしました。わたしは“マオ”。マスターのご命令に従います」


はわわわわ。声まで私そっくり。しかも機械音声じゃなく肉声。

ちなみに“マオ”とは、“魔王”から取った。ネーミングセンスがないので分かりやすさ優先である。




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