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17.魔王様、無双する



第二ステージ、極寒凍結


「さんむい!!!」


さっきとは真逆に全部を燃やす。

烈火魔法・焦熱焼尽しょうねつしょうじん

猛烈に燃え盛る空間で、鳥の姿をした氷の魔物が悲鳴を上げた。

どうせ燃やすのならフェニが適任な気もしたが、なにぶんこの迷宮ダンジョンは私が遊ぶためのものなので大人しく待機しててもらう。




第三ステージ・宇宙空間


「すごい!こんなの創れるの!?」


もはや本物なのかも分からないほどに完成度の高すぎる宇宙空間。しかも真空。

部屋に入り《3秒で酸素がなくなります》という表示でとっさに結界を張った。一瞬理解が追いつかなかったが、“宇宙”と“酸素”という言葉でどうにか間に合わせた。


「魔法とは想像力。それさえ理解すれば、出来ないことなどない…」

「え。その気になれば星も創れちゃう?」

「とは言いつつ私も、まさかマオがここまでやるとは思いもしませんでした」

「マジか…」


これ、無重力空間だけど、流れ的にボスいるよね。

ああ出てきた。神様みたいに大きいのが。…あれ、こういうのって神への冒涜とかにならない? あ、私魔王だから関係ないか。


虚無魔法・重力子弾ブラックホール

ギュッとコンパクトに圧縮した黒い球を、手の中にググッと握り込んで全力でデカい図体に撃ち込む。

体内に混入された違和感があるのか、苦しんでる様子があった。ふーん、効くのか。


巨体から離れて、黒い球があるだろう場所に手をかざす。ぐぐぐ…と握り潰す感覚で力を込めて。


虚無魔法・超新星スーパーノヴァ

ギュアッ!と巨体が中心に吸い込まれていく。シュバッと最後にはあの重力子弾ブラックホールが残り、小さく光った瞬間、あたり一面に衝撃がくるほどの爆発が起きた。


「うわっ」


《第三ステージ・クリア。次へお進みください》


宇宙空間が真っ白い空間に変化した。

あ。なんかもったいないことしたかも。




第四ステージ・無限回廊


「……うーん。上下感覚狂いそう」

「時空も歪んでいますね」


縦横無尽に張り巡らされた石畳の階段と通路。ただの回廊ではない。逆さま、横倒し、それがいくつも。

クロードが試しに放った魔力は、見えない壁に阻まれて消滅した。空間が歪んでいる証拠だ。


「…これは楽しめそうだね」

「………この状況を楽しめるのは魔王様だけでしょうね」


試しに私も魔法でつたを作り、向こう側の回廊に渡れるか投げてみた。時空の壁にぶつかり、蔦は消えてしまう。うーん。


「やはり順番に通るしかありません。これもルールです」

「ルール、ねぇ…」


回廊は全て転移門が端と端に設置されており、出入り口がどこに繋がっているのか目視出来ない仕様となっている。中には枝分かれしてる回廊もあって、方向感覚を狂わせるためのものだろう。

これは無限回廊というより迷路だ。挑戦者を迷わせるための。


迷わせる。そこでふと思いつく。

案内を作れば、迷う必要もなくない?

つくづく製作者泣かせだが、考えついたものはやってみたい。


煌芒こうぼう魔法・天啓の道導みちしるべ

手のひらから現れる神々しい光。ふわりと浮かんで分裂し、それぞれ転移門へ進んでいく。

転移門から転移門へ。分岐点で分裂を繰り返し……………。

私達の視界から見えるだけでも、光の数は50を超えた。…どれだけ分裂するの…?


「……え。これだけ分裂しても、まだゴールには辿り着かない…?」

「………驚異的な無限回廊ですね。通常の迷宮ダンジョンでもこの半分以下ですよ」


あまりにも多い数に、私とクロードがゴクリと息を呑んだところでようやく光が反応を示す。光の数60に達した。遠い遠い場所から通った道筋を光が細い線となって繋いでいく。


最後に私達のいる転移門へ繋がり、私の手のもとへ帰ってきた。……長いな。


「………長い遠足と洒落込みますか」

「無限回廊を遠足扱いする者も魔王様くらいでしょうね」




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