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16.魔王様、迷宮を楽しむ



入り口を通った瞬間、早速お出迎え。

中から光速で何かが飛んできて、私の頬を掠めていったのだ。


「……ッ!!??」


その速さに驚いたのはクロードの方で。

私はというと、紙一重で反応し顔を逸らすという最小限の動きのみでそれを避けてみせた。


避けた物体は遺跡の外へ。見えない壁にぶつかり大爆発を起こす。爆風は中まで伝わってきた。すんごい威力だ。

あの壁はきっと結界。内部の衝撃を外に漏らさないためのもの。マオってばすごいな。そんなところにまで気を遣ってる。


「……ん、ふふふふ」

「…ま、魔王様…?」


私が笑い出すものだからクロードが焦り出した。何でそんな青い顔してるんだ。


迷宮ダンジョン楽しい!!」


▶︎まおう は テンション が あがった !!


「すごい!今のどういう仕掛け!?いきなり飛んできた!!私じゃなきゃ見逃しちゃうね!?」


光速でかつ連続で撃ち出される正体不明の攻撃の数々。次々かわし、テンション爆上げで前進する。


「ま、魔王様。本来、迷宮ダンジョンはその区域に入らないと攻撃は来ないものなんです…。こんな、入り口から飛んでくるなんて…」


たまに攻撃を撃ち返し反撃。

いつもならもっと余裕のあるクロードが、今日はやたら動揺している。別に楽しいからいいのに。


「私は気にしないよ? 冒険ってこういうものでしょ?」

「違います!!!」


めっちゃ強く否定された……なんで。


「ここは迷宮ダンジョン!!一定のルールのもと構成された異空間なんです!!出入り口付近は罠を置かない!!ステージまでの通路は基本戦闘準備のための空間!!こんな、冒険者が常に気を張るような迷宮ダンジョン聞いたことがない!!!」


すんごい力説してる。なんならちょっと涙目である。

まあこの通路、あの自称勇者が来たとしたら軽く100回は死んでるレベルだ。


辿り着いた最初の関門、扉を開けるとそこは…マグマが一面に広がる“焦熱地獄”でした。

すごいな。魔法ってこんなものまで造れるのか。めっちゃ熱い。


「だってここは、マオが私のために用意した迷宮ダンジョンなんでしょ?」

「え、ええ…そうです…」

「なら、これが正解だよ」


私の返答に眼をまん丸くして固まる。

んー。これはさすがに熱すぎるな。私の周りはちょっと冷やしておくか。氷魔法の結界を張るとちょうどいい温度になった。


「この迷宮ダンジョンの攻略者は魔王(私)。レベルも魔王(私)に合わせたもの」


マグマの中から魔物が顔を出す。

さしずめ、この“灼熱地獄”の主と言ったところだろう。


「私の実力を誰よりも熟知しているマオが造ったんだから、これでいいの」


この部屋全てを覆い尽くせる魔力を、一気に溜め込む。

氷結魔法・永久凍土


壁の端から端、マグマの一滴、空気に至るまで。吐息が真っ白になるほど、凍らせていく。パキパキパキ…とマグマが冷やされ急速に氷漬けになっていく。

魔物が悲鳴を上げ、目を見開いたまま完全に氷河期のように凍った瞬間、部屋全体がパキン…と鳴った。


「………さすがです、魔王様」

「初めてならこんなものかな」


まだまだ出来ることがありそうな私の魔力。やってみたいことはやまほどある。


「…次行くよ」



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