12.魔王の業務報告
『マスター。お久しぶりです』
『マオ!?久しぶり、元気!?』
迷宮の製作を命じてから半年ほど経った頃である。脳内に懐かしい声が届いた。マオだ。
『元気です。…申し訳ございません、連絡が途絶えてしまいました…』
『いいの!頑張ってるのは知ってる!ありがとね、お疲れ様!!』
『光栄至極に存じます』
実際、マオが魔界で何をしているかなんて、私がこうやって平和に過ごせているのだから分かりきっていることだ。
『どしたの、何かあった?』
『いえ、ようやくひと段落いたしまして。そのご報告に』
『いやほんとにお疲れ様』
褒めても足りないくらいだと言うと、マオは声だけで分かるくらい照れていた。
『現在、迷宮の数、国内に50あまり。それぞれを幹部五名に管理させることで余計な争いを避け、かつ己の魔力向上にも繋がり最終的に魔界の統治に役立っていると思われます』
『おおおおお…。魔王だ。魔王がいる』
『? 魔王はマスターです』
すごい。ちゃんと魔王してた。知ってたけどすごい。
『冒険者も続々と迷宮へ来ております。魔物討伐成功者には素材や金、魔族に勝利した者には希少素材、防具などを報酬として宝箱に隠しておくなどし、冒険者には高評価をいただいています』
『え。めっちゃちゃんと迷宮だけど、それ魔族側は納得してるの?』
気になるのは魔族側の報酬だ。戦闘狂とはいえ、勝っても何もないとなると不満とか…。
『むしろ堂々と闘えるとみなやる気になっています。魔族も魔物も報酬に興味はありません。魔界でも争って勝っても何もないので。力の差を見せつけたいだけの連中です』
『あ…そういうもんなの』
『はい。根本的に人間とは違う、ということです』
何だかあっさりしてるなぁと思いつつ、上手く稼働しているようで良かったと安堵した。
『そういえばね。最初に迷宮が発見されてこっちもバタバタだったよ。父様と母様も忙しくてあんまり帰ってこれなくなっちゃった』
『そ……れは、大変申し訳ございませんでした…』
『いいの。魔界の統治をお願いしたのは私だし、迷宮を造ればこうなるってことも分かるはずだった。これは私の落ち度』
『……もう少し、時期を待つべきでした』
『あはは。一晩で迷宮を一つ造ったのは驚いたなぁ。おかげでマオの優秀さを再確認出来たよ。…ありがとうね』
魔界に送って(?)以降、魔族が王城に侵入してくることはなくなった。それはつまり、魔王の正体がバレていないということだ。非常にありがたい。
『冒険者の実力はどう? 強い人はいた?』
私がそう問うと、途端に無言になるマオ。えっとこの反応はたぶん。
『魔族はおろか、魔物のレベルで引き返してしまうのがほとんどです。話になりません』
あら。やはりか。
『……挑戦しようともしないのが、今の冒険者ってことか…』
平和ボケに、冒険者のやる気のなさ。
これは由々しき事態である。
迷宮のレベルを下げる…? いや、それは論外。豪華賞品を用意しても、達成感がないし意味がない。
ならかくなる上は。
『ちょっと強引だけど、仕方ない』
「…冒険者に、会ってみたい?」
「うん!」
久々に両親が帰城した。組合の運営に一区切りがついたらしい。
お疲れなところ申し訳ないけど、ちょっとワガママ聞いてもらいます。
「数百年振りの迷宮なんでしょ?危ないから行っちゃいけないのは分かってるけど、どんな人が行ってるのかは興味あるの!」
くらえ、愛娘のおねだり攻撃。
普段ワガママ言わない分、ここぞというときは多少の無理も聞いてくれるのだ。
私が考えた次の作戦。
冒険者に直で対面し、魔王討伐のやる気を出させる。冒険者(特に男)は昔から女の子からの激励に弱いと相場が決まっているのだ。
「…ふむ。組合からも冒険者の質が低いと聞く。王族からの報酬や激励があれば士気も上がるか…」
おっ。いい感じだ。
「いいだろう。冒険者を一人呼ぶ。勇者のスキルを持っている奴が、魔王討伐には適任だろう」
「勇者!?やったぁ!!」
まさか勇者に会えるのか。それは期待大だ。




