1.魔王倒しちゃった
「次の魔王の座は其方に譲る」
「私一応王女なんですけど」
膨大な魔力を持て余し、夜毎様々な魔法で遊んでいた私。
その魔力量に惹かれたのか、通りすがりの魔王が城の敷地内に侵入し、なぜか「勝負しよう」と決闘を申し込んできた。
この時、私はまだ6歳の幼女で世間知らずのお姫様だったので、目の前の男がまさか魔王だとはつゆ知らず。
「いいよ」
と二つ返事。その後究極魔法をぶっ放し、魔王を瀕死の重傷にまで追い込んだ私に、魔王が告げたのが冒頭のセリフである。
意味が分からない。
というのも。
私は元々この世界の住人だった。スラム育ちで魔法なんか使えないただの人間だが。
それが幼少の内に死んだ。死因は飢餓。まあスラム育ちなら割とよくあることだ。
死ぬ間際に私が願ったのは、次に生まれ変われるなら魔法を使えること。ただそれだけ。魔法があればお金や地位がなくても自力でどうにか出来る。必死に考えた願いである。
けれどもその願いを神様が叶えてくれたのか、私は底抜けの魔力を持った王女に転生した。生まれた時、自分の中に魔力があることにすぐ気付き、赤ん坊の頃から人目を忍んで魔法で遊んだ。
この世界には属性魔法が存在していて、基本の三大魔法元素の火・水・風から副属性、派生属性、特殊属性等々に枝分かれし、勿論全てを使える魔法使いはレア中のレア。
国専属の魔術師ですら、属性は偏るというのだからやはり素質は必須。
その属性魔法だが、神様は二物どころか三物以上を私に与えてくれた。
私の使える属性魔法は、全て。
現在のところ、使えなかった魔法がないのだ。
恐らくだが、歴史上唯一の全属性魔法の素質がある。そんなことってあるん???
あり得るのか?そう悩んでいたが、いかんせん前世は魔法も使えず餓死した私だ。
せっかく使えるようになった魔法、全力で謳歌しないと勿体ない!!
そこからの私は暇があれば魔法で遊んでいた。物を浮かせる魔法から、空間操作で小さな嵐を作り。部屋で焚き火もした。
色んな動物と言葉が交わせるようにもなり、この頃には犬猫だけではなく妖精や魔物とも意思疎通が出来た。
その私の異常とも言える素質に両親(国王と王妃)が疑惑を持ち、国の魔法士に鑑定させた結果判明したのだ。
実は魔物に好かれる体質であるということ。
一見して危険な体質だが、完全に私に懐いている魔物達を見て、両親と魔法士は「一旦様子見で」と結論を出した。
危害がなければ良しとしたのだ。
そして時は過ぎ、私は王族として振る舞いつつ魔法を堪能しながら魔物と触れ合うという個人的薔薇色生活を謳歌していた。
それが、知らなかったとはいえ魔王を倒してしまったのだ。魔王は「次代の魔王は其方だ。俺は隠居する」と意気揚々と引退宣言。己の部下や配下を私に継承するなどして、すっきりした顔をした。
「え、だから私王女なんだってば。人間。分かる?」
「関係ないな。魔王(俺)が決めた。それで十分だ」
「人間が魔王だなんてみんな納得しないでしょ。人間だって困惑するよ」
「魔界は実力主義だ、問題ない。ほれ、俺の右腕であり補佐官でもあるクロードだ、好きに使え」
「宜しくお願い申し上げます、新たな魔王陛下」
「いや話聞けよ」
執事姿の魔族をお下がりに貰うが私はまだ納得してない。
「どちらにせよ、たかが人間の小娘だろうと魔王から仕掛けた勝負に魔王が負けたんだ。このまま魔界に帰っても反乱が起きる。弱い魔王になんか誰も仕えないからな。止める者がいなくなった魔物共はいずれ人間界に進軍して戦争が起きるぞ。そうなるともう手がつけられん。そうならない為にも、新たな魔王は必要不可欠なんだ」
「…理由は分かったけど、いきなり口調変わってない?」
「これが俺の素だ。魔王のイメージがある」
「……魔王も大変だ…」
こうして、わずか6歳にして私は魔王になった。




