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【国家反逆罪】ボンボン二世議員、政界の闇に立ち向かう  作者: 九条ケイ・ブラックウェル
第二章「東京湾の罠」
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第19話:最初の攻撃

父が戦いそして敗れた相手の正体。それは一人の工作員などではなかった。顔も名前も持たない組織的な監視網そのものだった。

その恐るべき事実にたどり着いた翌朝から、敵の容赦のない最初の攻撃が始まった。


最初に異変が起きたのはSNSの世界だった。

陸の個人アカウントに突如として無数の誹謗中傷コメントが殺到し始めたのだ。

『高遠陸は港湾労働者を食い物にする悪徳政治家だ』

『あいつの父親も中国から金をもらっていたらしいぞ』

『都議会で居眠りしている写真を入手!こんな奴に税金を払いたくない』

『#ボンボン議員に税金を使うな』

「陸さん、これはただの炎上ではありません」

事務所で美鈴が青ざめた顔でモニターを見つめていた。

「1分間に約200件。24時間で28万件を超えるペースです。明らかにBOTを使った攻撃ですが、巧妙に人間の投稿も混ぜています」

画面には陸を中傷する投稿が、まるで黒い津波のようにリアルタイムで押し寄せていた。


そしてその日の午後。

本当の戦場である都議会で第二の矢が放たれた。

陸が文教委員として学校の老朽化問題について質問しようと立ち上がった、その時だった。

「議長! 緊急動議を提出します!」

綾小路派「東京フロンティア」の幹事長、桜井が野太い声を張り上げた。

「ただいま高遠 陸議員に関する看過できない事実が発覚いたしました!」


議場が一瞬にして静まり返る。

桜井は勝ち誇ったような笑みを浮かべ、一枚の書類をひらひらとさせながら言った。

「高遠議員が国会議員時代、経済産業委員会に所属していた際、**未公表であったゲーム産業に関する大規模な規制緩和の情報を、自らがかつて所属していた古巣のゲーム会社に事前に漏洩させていた**という、重大なインサイダー疑惑が発覚いたしました!」

議場がどよめきに包まれた。

「証拠はここにあります!」

桜井は背後の大型スクリーンに、陸とその会社の役員が交わしたとされるメールの文面を映し出した。


『例の件、高遠先生のお力添えのおかげで、準備は万端です』

『了解した。正式発表は来週の火曜になる。それまでに必要な手配をしておけ』

『株価への影響は相当なものになりそうですね』

『だからこそ慎重に。これは我々だけの情報だ』


そのメールの日付は、陸が実際にその役員と、全く別の用件で会食した日に、完璧に設定されていた。IPアドレスも巧妙に偽装され、一見すると本物にしか見えない、悪意の塊のような捏造だった。

「なっ……!」

陸は言葉を失った。

桜井はここぞとばかりに大声を張り上げた。

「元ゲームクリエイターという自らの経歴を悪用し、古巣の仲間と結託して私腹を肥やす! これがクリーンな政治を掲げていた若き改革者の真の姿であります! このような人物に16兆円もの都の予算を扱う資格が果たしてあるのでしょうか!」

その言葉を合図に、綾小路派の議員たちが一斉に同調のヤジを飛ばし始めた。

「そうだ、そうだ!」「辞職しろ、高遠!」

議場は一瞬にして陸を断罪する異様な熱気に包まれた。


本会議が終わり、陸が重い足取りで廊下を歩いていると、後ろから桜井が追いついてきた。

「高遠先生」

その声は先ほどの攻撃的なそれとは打って変わって、ねっとりとした甘い響きを持っていた。

「いやはや残念ですよ。あなたは有能な方だ。もう少し我々と協調的になってくだされば、こんなことにはならなかったものを」

桜井は陸の耳元で囁いた。

「これが我々の『朝食会』を無下に断った代償ですよ」


陸は何も言い返さなかった。ただ目の前の男の醜く歪んだ笑顔を、氷のような目で見つめ返しただけだった。

(これが政治か…いや、違う。これは政治ではない。ただの暴力だ)

しかし陸は、ここで感情的になれば相手の思うツボだということも理解していた。冷静に、そして確実に、この罠から抜け出す方法を考えなければ。


事務所に戻ると、橘と美鈴が、険しい顔で待っていた。

「陸、見たぞ。テレビ中継。ひでぇ茶番だったな」

橘の声には、隠しきれない怒りが滲んでいた。陸が、黙って頷くと、美鈴がノートパソコンを、そっと彼の前に差し出した。

「でも、一つだけ、良いニュースがあります」

画面に映し出されていたのは、SNSのタイムラインだった。そこには、誹謗中傷の嵐に混じって、いくつかの、しかし、力強い声が上がっていた。

『今日の議会の高遠議員への攻撃、あまりに不自然すぎる』

『メールの日付、怪しくない?』

『私は高遠都議の給食費改革を知ってる。彼はちゃんと仕事してる』

そして、美鈴は、一つの新しいハッシュタグを指さした。


『#高遠陸を守れ』


それは、巨大な嵐の中の、ほんの小さな光だった。

だが、今の陸たちにとっては、それで十分だった。

陸は固く拳を握りしめた。その目には絶望ではなく、静かな、しかし決して消えることのない闘志の炎が燃えていた。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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