天才 花凪圭太
完結まで書き終わってるので毎日投稿中です。
唐突だが、君はお土産というものにどんな印象を抱くだろうか。
安く済ませる物? 人間関係に気を遣って面倒くさがりながら買うもの?
はっきり言わせてもらおう。
もし先述のような考えをもってお土産を買うのであれば、それは凡人の証である。
この私、花凪圭太のような天才とは言い難い。
だが大丈夫だ。君、気に病もうことなかれ。
天才とは少数派であり、多くは凡人だ。私のような天才はほんの一握りしかいないといえよう。
であればこそ、天才たる私が先陣を切って君らにお土産の真髄を示さねばならん。
心して聞くがいい凡人ども。
──お土産とは戦争である。
お土産に選ぶ品とは兵器なのだ。決して無難に済ましてはいけないよ。
君が選んだ兵器の威力が高ければ高い程、相手に感動という衝撃を与えるのだから。
お土産に感動した相手は恐れ慄き、君にこう切り出してくるだろう。
『すごく美味しいね、これ! どこで売ってるの? ちょっと連絡先教えて!』
『うわあ、お土産のセンス良すぎ! 一緒にカラオケ行こうぜ!』
『まあ素敵! 今夜どう?』
そうなれば最早戦況は圧倒的にこちらが有利だ。
彼のお土産はすごく美味しかった、彼女のお土産を選ぶセンスは素晴らしいと、君たちが所属するコミュニティの誰もが君の存在に一目置かざるを得ない。
その先に待っているのはあらゆる人間関係の向上と確固たる地位である。
そして何より、意中のあの子との急速な接近を可能にするのだ。
誰もが君に笑顔で話しかけ、感謝を伝え、君を認めた人々が集まり、君を中心とした快適なコミュニティが新たに形成されること間違いない。
想いを寄せる相手は笑顔で駆け寄ってくれて、弾む会話に自然と二人は──。
何? そんな訳ない? たかがお土産程度?
成程、百聞は一見にしかずとはよく言うが、今回も当てはまるようだ。
刮目せよ。
これからお見せするのは、お土産によって意中の女性を虜にしてサークルの中心に立つ男の神技だ。そしてはみ出しものである私の華麗なる逆転劇でもある。
地元の京都で幼馴染との初恋に敗れ、逃げるように名古屋の大学に入学した私は、とある女性に運命的な一目惚れをした。しかし彼女は名乗りもせず、私を旅サークルの名友会に誘ったあと、忽然と姿を消してしまったのだ。
私は彼女を山田花子と仮称し、サークル内で情報を集めようとしたのだが、凡人の群れにとって天才たる私は異物でしかなかった。人間関係の構築にことごとく失敗し続け、サークル内で孤立した私は、花子の情報を集めるためにまず周囲の凡人と仲良くなる必要に駆られたのだ。
そう、今こそお土産の出番である!
いざ、行かん!
愛知県が誇る屈指の紅葉の名所『香嵐渓』で私が選んだ渾身のお土産、自然薯のポタージュがもたらす強烈な旨味は、お椀を持っておかわりをねだり散らかす徘徊者と、トロっとした液体を一心不乱に啜る中毒者を生み出し、この花凪をチヤホヤする人間だらけという栄光をもたらすのだ!
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