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召喚士

休憩挟む?」


 立って話を聞いていれケージの腰がどんどん下がっていく姿を見てアレイルは言った。


「いえ、中途半端に休んだほうが辛いんで、続けてどうぞ」


 青い顔のままケージはアレイルに言った。


 そういうなら、とアレイルは続けた。


「そうして誕生したアルストロだが、建国後数年は実に平穏な日々を送っていた。しかしある日、事件は起こった。それは禁止されていた"召喚"を誰かが起こしたことだった。

 当時、"召喚術"は禁呪として扱われるようになっていた。なによう今までの経緯が経緯だ。いつ似たようなことが起きない保証はない。人々は、"召喚"を危険な術とし封印するように取り決めていた。その矢先の事だった」


 というのも、ガーデンについてまったく知識のない異世界人がアルストロに現れたのだという。終末戦争以降召喚を禁じており、大なり小なり異世界人がガーデンの惨状を少なからず把握している中で、コレは明らかに異常な事であった。


「アルストロは術者を徹底的に洗った。せっかく訪れた平和だというのに再び同じようなことが起これば元の木阿弥だ。国中隅々までひっくり返したが術を行使したらしき術者は見いだせなかった。結果としてアルストロの代表たちはこう結論付けざるおえなかった。"門"は自然発生したものである、と。

 これはガーデン史上もっとも驚くべき問題だった。何せそれまでの常識では"門"は術者によってのみ解放されるモノであり、自然発生することは絶対にあり得ない現象であったからだ」


 その事実に行き当たったアルストロの住人達には驚天動地であった。今では当たり前になっているものの、天地をひっくり返しても起こり得ないと思っていたことが起きたのだから。


「当時のアルストロ代表たちは早急に事態の把握に努めた。調査の結果、国内外で自然発生する"門"の存在を確認した」


 調査報告が上がるたびに代表達の顔色は悪くなっていったと言われている。何せ、操作出来いい"門"がガーデンにどれだけの損害を与えるかなんてまったくの未知数であったからだ。


「アルストロの代表達はすぐさま対策に乗りだした。しかし、なによう今までにない事例だ。どのように扱えばいいか手探りの状態だった。

 "門"の発生は日を追うごとに増加していった。その内に報告の中にある記述が増えていった。閉じない"門"の存在がある、と。

 これは由々しき事態だった。異世界と繋がったまま入口が開きっぱなしになってる状態だ。異世界から異世界人が来放題だ」


 鰻の罠であろうか、ふとアオエが思った事を口にした。聞いたアレイルが苦笑した。


「似たような状態だね。でもまぁ、無秩序に増える異世界人はガーデンには好ましくない。いや、それ以前が良好であったとはお世辞にも言えないけどね。で、代表議会は開きっぱなし"門"を閉じる対策を"召喚士"に命じた。

 とはいえ、実際問題どうすればいいかなんて誰にもわからなかった。何せ"召喚士"は今の今まで"門"を開く事はあっても閉じた事はない。開いた"門"は自然に閉まっていたんだから。恥ずかしながら我々は自分の家の勝手口の閉じ方をしらなかったんだ」


 "門"は発生させることはあれど閉じる事はなかった。何せ発生させた"門"は蒸発するように消え失せていたからだ。召喚士の中に"門"を閉じるなんていう発想は皆無であった。


「事態を解決しようと試行錯誤した結果、"門"を大きくしたり、不安定にして一帯を消滅させたりと成果と呼べる代物でないことばかり起きた。世界を滅ぼす気か、なんて言われた事も多々あった。

 当時、アルストロは異世界人の魔法使い達とは比較的に懇意にしていた経緯がある。先に話した通り利用出来るか出来ないかはさておき、技術体系が類似してたからね。その中でも熱心な魔法使いとは交流があったんだ。第一、初期の"門"の対策については魔法使いの協力による点が大きい」


 記録によれば魔法によって"門"のある空間を一時的に断絶していたという。"門"自体が閉じれなければ周りの空間を閉じてしまえばいい、という些か荒業であったがそれなりに有効な手ではあった。


「技術体系が類似しているなら何かしら応用する方法があるはず。当時の召喚士はそう考え異世界の魔法使い達に師事をあおいだ。魔法使い達のいうところのエーテルやらマナやら自然由来のエネルギーとオドという人間由来のエネルギーがあって、それと類似したものがこの世界にもある事は示唆されていた。

 調査、研究の結果どうやらこの世界のエネルギーは自然由来は正の性質、人間由来は負の性質を持っている事が分かった。まぁ、正負は便宜的に表現しているけどね。"門"を開く仕組みは人間由来の負の力を自然由来の正の力に当てて環境を負に近づける事によって"門"を開くという仕組みまで理解出来た」


「現に解決している問題であるが、室長殿その理屈でいくと」


 アオエの言葉に、そうだね、とアレイルが答えた。


「"召喚士"は"門"を開くことしかできないことになる。召喚の仕組みが分かったところで閉じれなければ意味がない。魔法使いとのやり取りはガーデンに残酷な現実を突きつけただけだった。

 流石の代表議会もこれには途方に暮れた。この事実を国民に公表すべきか否か。知れれば民衆が暴動を起こす可能性が高かった。会議は踊れど進まず。答えの先送りをしていた最中、事情をしる"召喚士"がヤケを起こした」


 よくある話よなぁ、とアオエは言った。


「ヤケを起こした"召喚士"ははた迷惑なことに世界を滅ぼして自分も死んでやるって馬鹿でかい"門"を開こうとした。一人密かにエネルギーを練り、皆が気づいた頃には大規模な"門"が開けられるほどのエネルギーが練られていた」


 おっかねー、とカズヤは苦笑する。それを見てアレイルは肩を竦めた。


「一斉に仲間が止めにかかった。最悪一帯が吹き飛ぶ事になるが、大規模な"門"の出現は避けられる、と。しかし、それより早く"召喚士"はエネルギーを開放した。結果は何も起きなかった。

 皆不思議がったという。何せ明らかに家一軒くらいのサイズに達しそうなエネルギーが蓄えられていた。それがうんともすんともいっていない。当時最高峰と呼ばれていた"召喚士"が雁首揃えて首を傾げたんだ」


 「偶然ってあるもんだな」


 カズヤが感心したようにいい、本当にね、とアレイルは返した。


「"門"を展開して気絶していた召喚士を詰問し、状況を整理し魔法使いにも意見を伺った結果、どうやら滞留していたエネルギーの性質そのものが変化していた可能性があった。つまり、人間由来の負のエネルギーが正のエネルギーに変換されているかも知れない、という事だった。

 ただちに"召喚士"達は実験を開始した。どの程度の時間エネルギーを滞留、循環させればいいか数字として記録した。状況から察するにおよそ術士の気力の限界手前迄でないかと考えられた。結果、複数の"門"と数多の術士の犠牲を払い、"召喚士"達は"門"を閉じることに成功した」


 死んでないんだけどね、とアレイル。


「それでも問題は多くてね。第一に一般的な"召喚士"が一人で"門"を閉じるには個人の有するエネルギーの殆どを用しなければならない程に効率が悪かった。これは一時的に"門"自体の開閉が不可能になるくらい消耗する。そんな訳で初期の態勢では三人一組で対応にあたらなければならなかった。一日一グループ3つまで。文字通り死ぬほど大変だった。それにガーデン中に"門"が展開しているもんだから無限に召喚士がたらない。挙句に"門"な訳だから異世界人ともバッティングしてしまう。みんな友好的とは限らないからね、どうしても用心棒が必要さ」


 そう言ってアレイルはアオエとカズヤの2人を指差し、二人は揃って肩を竦めた。


「代表議会はすぐさま"召喚士"を招集。"管理局"の前身である"召喚士協会"を設立。また、異世界人にも協力者を募り大規模な"閉門作戦"を実行した」


「しっかし、よくその状況で異世界人が協力者したもんだな」


「まぁ、"勇者"なんかは元来お人好しなところはあるからね。それ以外でも先立つ物は必要さ。そりゃ無理くり奪えばいいかも知れないけど、無秩序は結果として自分達の首を絞めるから。出生地とこの世界の三度舞を繰り返す必要もない。今みたいに寄る辺もなければ"新参"でもないなら自主的に協力してくれてたよ」


 何せその当時、ガーデン自体も荒廃していた。度重なる戦闘によって都市という都市は崩壊していたからだ。集まったガーデンの住民以外、荒野に放り出されたのと同意義であった。ある意味で異世界人の協力者は必然であった。何より、これ以上荒らされても迷惑以外なんでもなかった。


「という事で国家事業としてアルストロは"門"の閉門を開始した。こうして現在に続く"管理局"は誕生したのでした」


 以上開局編とアレイルは言った。


「ついでに"門"を閉じる為に世界中旅するものだから各地の異世界人の管理も任されてる。そう意味でも"管理局"であるんだよね」


「ついででやる事じゃねぇな」


 呆れたようにカズヤが言い、本当にね、とアレイルが返した。

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