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なろうラジオ大賞6応募作品集

ダメ男彼氏と観覧車

作者: 富井トミー

 私の彼氏は少しおかしい。

 普段から思っている事だけど、今日は一際磨きがかかっている。

 だって、折角の遊園地デートの最中なのに――


「ねぇ、次は観覧車に乗ろうよ?」


 私の誘いに、彼は全力で首を左右に振った。

 絶叫系は大丈夫だったから、高所恐怖症という訳では無さそう。

 じゃあ、なんで?

 そんな私の疑問に、彼は青ざめながら言ったのだ。


「だって、あれ……でっかいあれだよ!」


 あれってなんだよ?

 最初のあれは、観覧車の事というのは分かる。

 じゃあ、もう一つのあれは?


「あれってなに?」


 聞かないほうがいい。

 そんな予感はあったけど、聞いてしまった。

 案の定、この後げんなりする事になるんだけど……。


「パンジャンドラム!」

「はい?」


 つい、聞き返すような「はい?」を口に出してしまった。

 全くこれっぽっちも、そんな意図は無かったのに。

 しかし、手遅れだった。

 彼は、本当にどうでもいい事を口走り始めたのだから。


「自走式の車輪型爆雷だよ! 第二次大戦中にイギリスで開発が行われてたけど、中止されちゃったんだ。でもね、凄く面白いアイデアでね、なんと……ロケット推進力を車輪の回転に使おうとしたんだ! 普通なら、空を飛ばすためにつかうべき物をだよ?」


 (まく)し立てられるも、ほとんどが右から左へ抜けていく。

 だから、私は聞いたのだった。


「簡潔に言うと?」

「珍兵器!」


 ほらね、やっぱりおかしい。

 その珍兵器がどんな物かは知らないけど、絶対まともな物だとは思えない。

 それを観覧車と結び付けるのだから、今日も絶好調のようだ。


「それで……珍兵器と似てるのと、恐がるの。関係ある?」

「あるある」

「なにさ?」

「あれって、ロケット搭載してるんでしょ?」


 観覧車と珍兵器、(イコール)で結ばないで欲しい!

 どこの世界に、観覧車を絶叫系に魔改造する馬鹿がいるのよ!

 

「そんな訳無いでしょ!」

「えっ、でも……」

「黙ってついてくる。いいわね?」

「はい……」


 彼を伴って、観覧車へと乗り込む。

 係員さんが扉を閉め、笑顔で送り出してくれた。

 いや、苦笑だったかも……?

 だって、彼は私の腕にしがみつき、小刻みに震えているのだから。


「ロケットも爆発も無いわよ……」


 そう言いながら、彼の頭を優しく撫でた。

 すると、彼は半泣きのような顔で私を見上げ、こう言う。


「本当に?」


 顔だけでなく、声も泣きそう。

 なので、まるで子供をなだめるように、優しく返す。


「本当よ」


 彼は笑顔を浮かべた。

 ああ、この笑顔に何度(だま)されるんだろう?

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